スティーブ・レヴィさんの著書、「iPodは何を変えたのか」を読み終わった。
今回は、iPodをiPodたらしめているものとは何か、と言うことを考えてみたい。
2005年1月、アップルはiPodの廉価モデル、iPod shuffleを発表する。
Steve Jobsによると、この新しいモデルは予算の厳しい人々にもデジタル音楽への門戸を開放することが狙いだった。
しかし問題はあった。
販売価格を99ドルに設定したものの、そのためには既存のiPodの基本的な構成要素である液晶の操作画面、スクロールホイール、ハードディスクドライブはどれも値段が高すぎた。
この問題を解決に導いたのは、Jobsの閃きだった。
当時のアップルは、すでにiPodユーザーのほとんどがシャッフル機能に夢中になっていることを知っていた。
そこでJobsはこんなことを言ってのける。
「よう、とんでもないアイディアを思いついたよ。これ、シャッフル前提の製品にしてみたらどうかな。もしそういう製品を作ってみたら、どんな感じだと思う?」
シャッフル前提の製品にしてしまえば、ユーザーがすべての曲を閲覧するための装置が不要になる。
精密なスクロールホイールは不要になるし、液晶画面もいらない。
必要なのは、いつシャッフル再生を開始するかを伝える機能だけだ。
しかし、iPodを卓説した音楽プレイヤーにしている要素である液晶画面やホイール、メニュー選択のインターフェイスを取り除いたものは、果たしてiPodと言えるものなのだろうか?
iPodをiPodたらしめている要素とは?
Jobsの答はこうだ。
「iPodというのは、卓越した音楽プレイヤーのことなんだ。」
つまり、聞きたい曲を簡単に選択できなかったり、現在聞いてる曲が何なのか知る方法すらないことは、iPod shuffleの欠点ではないのだ。
むしろ、音楽ライブラリをすべてごちゃ混ぜにしてユーザーの予期せぬ曲順再生を実現するという優れた機能であり、この製品の一番の特徴なのだ。
広告キャンペーンにおいても、この制約をこのように讃えている。
「すべて偶然に任せよう」
「人生はランダムだ」
iPodの持つ美しいデザイン、優れたメニュー選択のインターフェイスや液晶画面、スクロールホイールも確かにiPodを特別たらしめている要素だが、それが本質ではないのだ。
本質は、「誰でも簡単にいつでも好きな音楽を楽しめる音楽プレイヤーである」ということ。
美しいデザインも、スクロールホイールも、この本質をサポートするための「機能」なのであって、本質である「音楽プレイヤーである」という要素が満たされていなければ、単なる飾りに過ぎないのだ。
思い出してほしい、他企業の出したポータブルMP3プレイヤーがことごとくiPodにこてんぱんにされたことを。
確かにiPodよりも容量が大きかったり、機能が優れていたり、安価だった製品はあっただろう。
しかし、「誰でも簡単にいつでも好きな音楽を楽しめる」という本質において、iPodを上回った製品は一つもなかったのだ。
「高度なことが簡単にできる」というアップルの貫き続けたポリシーが、大勝利したのだ。
iPodは何を変えたのか? | |
上浦 倫人
ソフトバンク クリエイティブ 2007-03-29 おすすめ平均 |
2 Comments
遊びにキター!!!何かすげえ読み応えある事記事にしてますね;wi-POD俺も持ってますよ~チッコイ奴の4ギガタイプ。
記事を見て面白そうな本はゲットしてみようと思いましたよwそれとlemoned-icecream氏に報告をば。
バイト辞めてからもじ~と地道に続けていた同人サークルの新しいサイトがようやく完成しました★
是非遊びに来てくださ~い!
http://tstyle-works.web.infoseek.co.jp/
T-TRACK氏久しぶり~。
HP復活おめでとう!さっそく見てきたよ。
正直、あまりの上達ぶりにびっくりしたわ。
これも好きなデザインの勉強をがんばってきた成果だね。
面白そうな本があったら、是非読んで、T-TRACK氏なりの見解を教えてほしいな。
氏ならではの洞察とかありそうだしね。
あと、デザイン関係とかでお勧めの本があれば紹介よろしく!
ではまた。