清宮普美代さんの著書、「質問会議 なぜ質問だけの会議で生産性が上がるのか? 」を読んだ。
本書で言う「質問会議」とは、アクションラーニングのことです。
質問を用いながらお互いの意見を引き出していく様子をイメージしていましたが、実はこの会議、
●「質問」と「質問に対する答え」しか発言してはいけない
という、ちょっと不思議なスタイルです。
これと対になるものとして「意見会議」がありますが、これは往々にして、
●問題を断定してしまう
●一人ひとりが考えて、自分の解決策を提示して終わり
●助言が受け入れられ、実行されるか不明
という性質を持ち、非生産的になりがちです。
これに対し「質問会議」には、
●問題の本質を発見できる
●会議と実行がセット
●問題を解決しながら、個人とチームが共に成長できる
といったメリットがあります。
詳しい手法については本書を読んでほしいのですが、この「質問会議」のポイントは問題解決のみでなく、それを通した個人の成長、そして個人の成長をベースとしたチームの成長にあると思います。
ビジネスの場では往々にして目の前の問題を早く解決することが求められ、優れた一人の力に依存することが最もスピーディーであることもめずらしくありません。
しかし、これではメンバーの成長が望めませんし、チームとしての生産性は頭打ちです。
個人、そしてチームの成長が、長期的な発展には不可欠です。
「質問会議」では個人・チームの成長にそもそもプライオリティがあります。
個人としては
1.質問力
2.傾聴力
3.共感力
4.思考力
5.フレーム打破力
といった能力が開発され、それらが基になってチームとしての
●共有=チームとしてのビジョンの共有・論理的調和
●共感=信頼・感情的調和
が促進されます。
また、現代のリーダーには
●解決策をメンバーから引き出す力
を求められていることから、質問会議で共有・共感を養うことは、そのままリーダーシップの育成にもつながります。
一口で三度おいしい、かなり興味深い手法です。
お勧めです。
以下、私用メモ
質問会議の8つのポイント
1.参加者とその役割
・4~8人が妥当
・問題提示者-当事者として抱えている問題をチームに提示
・問題提示者以外のメンバー-問題を熟知していなくてよい
・ALコーチ-単なる司会ではなく、チーム育成のためのリーダー
・参加者は全員平等
・多様性のあるメンバーが良い
2.ALコーチの設定
・問題解決に直接関与しない
・結果を導くより、プロセスを管理する
・みんなが考える時間、振り返る時間を提供する
・会議進行と時間の管理をする
3.時間とその配分
・1回1時間
4.基本ルール<質問中心>
・質問と、それに対する答えのみ
・問題に対して質問を繰り返すことで、本質に迫る
・質問することで、傾聴力・質問力を養う
5.基本ルール<振り返りとALコーチ>
・リフレクションにより学習を習慣化
6.現実の問題
・現実に起きている問題
・等身大の問題
・チームに決定権のある問題
・解決策がいろいろ考えられるような、複雑な問題
・重要度が高く、緊急性のある問題
・少数メンバーが問題に精通している問題
7.行動計画と実施
・メンバー全員で行動計画を練り上げ、実行し、振り返ることで、思考力、チーム力を養う
8.成長と変化に対する意識づけ
質問会議の進行の12のステップ
1.2つの基本ルールの提示と確認=質問中心・振り返りの時間をとる
2.チーム規範の設定
・守秘義務
・セッションへのコミットメント
・共有とサポート
・平等と尊重
・傾聴と振り返り
・課題そのものに注意を向ける
3.問題の提示
4.質問で問題を明確にする
5.途中の振り返り=新しい視点でのアプローチ
6.問題を再定義する
7.同意できないことの意味
8.問題がテーブルの真ん中に
9.目標・ゴールの設定
10.行動計画の作成
11.全員の行動=サポートを誘発する
12.振り返り
質問会議 なぜ質問だけの会議で生産性が上がるのか? | |
清宮 普美代
PHP研究所 2008-09-20 おすすめ平均 |
2 Comments
本質を知りたければ「なぜ」とかが有効で、実行するためには「いつ」「誰が」「何を」「どのように」を使えばいいのかなぁなんて思いました。
ALコーチの力量に左右されるかもしれませんが、興味深い手法ではあると思います。
ただ学生時代からの会議経験からいうと、どうしても司会者の経験不足がボトルネックになり、思い通りの成果があがらないことが多いかなぁ。
何が言いたいかって言うと知識・手法の引き出しを増やしておいて、本番で失敗しながら取捨選択と経験値UPを目指すのが王道なのかなって。
今度の会議ではやるだけやってみます!
参考になりました、ありがとう☆
マックさん
私もALコーチの力量に左右される部分が大きいと思います。
この役割は組織のリーダー、もしくはその候補生が勤めるものとされてますね。
おっしゃるとおりで、まずは知識・手法の引き出しを増やした上で、
実践し、出来た部分と出来なかった部分を分析して、
また次回挑戦する、というサイクルを回すのが王道ですよね。
何か参考になればと思いましたが、
全体会議となると4~8人というわけにはいきませんよね(^^;