抜擢される人の人脈力 早回しで成長する人のセオリー | |
岡島悦子
東洋経済新報社 2008-12-12 おすすめ平均 |
岡島悦子さんの『抜擢される人の人脈力 早回しで成長する人のセオリー』を読みました。
本書は人脈という切り口で個人のキャリアを論じた一冊ではないかという印象を受けました。
人脈を、キャリアの方向性・やりたいこと・目的・自己実現といったこととこれほど密接に結びつけた本は初めてで、「オススメの人脈本は?」と聞かれたら私は迷わず本書を挙げたいと思います。
本書では人脈を通じて成長し、自己実現に向かう様子を
1.自分にタグをつける(自分が何屋なのか訴求ポイントをはっきりさせる)
2.コンテンツを作る(「お、こおいつは」と思わせる実績事例を作る)
3.仲間を広げる(コンテンツを試しあい、お互いに切磋琢磨して、次のステップを共創する)
4.自分情報を流通させる(何かの時に自分のことを思い出してもらうよう、種を蒔く)
5.チャンスを積極的に取りに行く(実力以上のことに挑戦し、人脈レイヤーを上げる)
という5つのステップと、それを繰り返しサイクルとして回すことで「人脈レイヤー」をあげて活躍するステージをスパイラル上に上昇させていく、「人脈スパイラル・モデル」として見える化しています。
先にも書きましたが、このモデルは「自分が何者で、何をしていくのか」ということと非常に密接につながっているので、特に若い世代の人に読んでもらいたいと思います。
私自身、本書を読みながら自分の方向性がますます明確になっていくのを感じ、読後の今、新たな一つの結論を導き出すことができ、非常にすがすがしい気分です。
また、「そもそも人脈なんて必要なのか?」という人は是非本書の、「人脈のパラダイム・シフト」という箇所を読んでみてください。
これはドラッカーの『プロフェッショナルの条件』にも書いてありましたが、
●企業の組織寿命が短命化し、個人のビジネス寿命のほうが長くなる
●組織は、定常型組織から、プロジェクト型組織へと移行する
●人は、クリティカル・ワーカーとルーティン・ワーカーに二極化し、ルーティン・ワーカーの仕事はグローバルな労働力に代替される
●リファレンス文化が普及し、所属組織名での評価から、個人の実績や仕事振り重視へと、評価の質が変化する
と聞いては、今後は個人のブランドを持たずに、また、人脈を持たずに働くということが困難になりかねないというのは自明のことだと思います。
最近は派遣労働者のリストラ問題がクローズアップされていますが、厳しい言い方かもしれませんが、私はそれはあくまで本人が選んだ道なのであって、責任は本人にあるのだと思います。
「会社から首になったら、働き先がなくなった」「会社が倒産したら、どこも雇ってくれなくなった」とならぬよう、自分のキャリアは自分で責任を持って管理していく「自己マネジメントの時代」がやってきたのだと私は思います。
というわけで、人脈とキャリアデザインを同時に学べる非常にオススメの一冊なので、是非読んでみてください。
以下、気になった箇所をまとめます。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
● 自分にタグをつける
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・自分の志向やスキルをタグにするには、自分の信念や使命感といったものとどこかで結びついていないと、説得力の弱いタグになってしまう
・タグは「Will」「Skill」「Value」の三つから考える
1.将来どんな仕事をしたいか
キャリアの方向性を示していればいい
キャリアプランを綿密に作り上げる必要はない
抜擢の場面で思い出してもらえるよう、「やりたいこと」をあらかじめ表明しておく
「やりたい仕事を手に入れるために、今どんな努力をしているか」も話す
「やりたいこと」を考えるに当たり重要なのは、自分との対話、つまりは「内省」
自分の魂が震えるくらいのめりこめることは何か」という自己実現欲求に立脚した意欲・アスピレーションを突き詰めることが必要
2.自分にできることは何か
実力ではなく、可能性
3.相手にどんなメリットをもたらすか
本書に
キャリアプランを綿密に作り上げようと努力している方も拝見しますが、変化の早い現代において、そのために時間を使いすぎることはあまりお勧めできません。(中略)
キャリア・ドリフト(漂流)という概念(キャリア計画を立て過ぎず、やりたいことだけを明確にした上で、漂流しながら実力を蓄積しておき、来たチャンスという波をしっかりと捉まえる)が主流になってきています。
という記述があったのですが、これは自分のビジョンを考える上で非常に参考になりました。
私自身、長期的な目的、やりたいことの方向性はありますが、具体的なビジョンとしては5年後くらいまでしか考えていません。
その後についてはそのときにならないとわからないし、今は5年後くらいまで考えておけばいいと思っていたのですが、本書を読んで改めてそれでいいのだと安心しました。
「漂流しながら実力を蓄積させ、来たチャンスをしっかり捉まえる」というのは勝間和代さんの「起きていることはすべて正しい」にも通じる考え方ですね。
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● コンテンツを作る
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・コンテンツを作れそうなチャンスを得たら、いきなり自分のやりたいことを実行しない
・まずは相手が求めていることに100%応える
・少しずつ仕事を自分の「やりたいこと」に引き寄せていく
・ビジネスに必要な心肺機能
脳に汗をかくくらい頭を使う
ビジネス上の修羅場を経験する
自分の名前で仕事をする
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● 仲間を広げる
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・人脈を共創できるような仲間と活躍のステージを上げていく
・仲間とは、「タグ」や「コンテンツ」について評価や駄目だしをしたり、関連しそうな人を紹介してくれたり、活躍の機会をもたらしてくれたりする、同志のことで、人脈の核となるグループのこと
・「やりたいこと」「価値観」と関連した切り口での勉強会コミュニティを開催する
・参加者全員が「貢献せよ、さもなくば去れ」を認識しなければならない
・議論のクオリティに厳しい目をお互いが持つ
・特性がバラバラな仲間のほうが学びが多い
・フリーライダーは許されない
「貢献せよ、さもなくば去れ」、これは読書会「TRICKYY」のときや、その他コミュニティを開催するときには是非実践しようと思いました。
幸いTRICKYYも着実に密度が濃くなってきており、貢献のギブ&テイクが成り立つようになってきました。
抜擢される人の人脈力 早回しで成長する人のセオリー | |
岡島悦子
東洋経済新報社 2008-12-12 おすすめ平均 |
2 Comments
こんにちは。
わたしも、本書読みました。わかりやすいですよね。
参考にして、実践したいと思いました。
人脈の本というと、わたしは、藤巻さんの人脈の本も好きですね。
ビジネス書スクエアさん
私の場合、特に勉強会の運営に関するTIPSが即実践できそうだったので、
これは次回から取り組みたいと思います。
藤巻さんの本というと、『自分ブランドで勝負しろ!』
でしょうか?
そういえばこの前書店でこのタイトルをちらっと見た気がします。
未チェックなので、今度チェックしてみますね。