「千円札は拾うな」の著者、安田佳生さんの著書、「嘘つきは社長の始まり」を読んだ。
あまり注目されていないようですが、この小さな文庫本は読んでいて実に味わい深い、なかなかの一冊です。
著者はいきなり、「人の幸せは相対評価で決まる」と断言します。
百点という「絶対値」では幸不幸は決まらない。
幸不幸を決めているのは、「相対評価」なのだ。
人間社会はすべて比較論で成り立っている。
確かに「人は人、自分は自分」といいつつも、人は自分を他人と比べてしまいがちな生き物です。
であるならば、自分より下の人だけを見ている限り、人は幸せでいられるのではないか。
どこを見るか、どこと自分を比べるかで「幸せ」は決まってくる。
(中略)
幸せな人は、自分より上は見ない。
彼らは常に自分を下と比べて「ああ、自分は幸せだなぁ」と思っているのだ。
これは現代社会の本質をついていると思いますが、面白いのは「人より上であれば自分のほうが幸せだ」と何の根拠もなく思い込んでいるところです。
「あいつに比べたら俺も幸せだな」というのは本人が勝手にそう思い込んでいるだけで、気休めに過ぎません。
考え方を変えただけで、自分の現状が何一つ変わったわけではないのです。
そもそも何を持って幸せを比較しているのでしょう。
学生時代の著者は、全くと言っていいほど「出来ない」子供だったそうです。
水泳は背泳ぎしか出来ない、テストは0点、勉強は分からないので授業中は鉛筆で一生懸命トーテムポールを作っていた。
テストの成績が悪く、先生に「四十七人中四十五番だぞ、どう思っているんだ!」と聞かれても、「驚きました。僕より下がふたりもいるなんて本当に驚きです」と応えて怒られるような高校生だったそうです。
アメリカの大学に通ったのも、偏差値が低くて日本の大学に入れなかったからなのだそうで、最初は全く英語が話せなくて語学学校にかようはめになったとか。
そして帰国後はリクルートに入社するのですが、たまたま担当の面接官が休養で経験の浅い面接官が代わりを務め、経験不足ゆえに採用してしまったのだそうです。
しかし社長となり、実績を作った今では
●アメリカの大学に通っていた
●帰国後はリクルートに入社
●二十五歳で起業
というプロフィールを見せると「すごいですね!」と周りがちやほやするのですからお笑いです。
結果さえ良ければ、すべてのプロセスが肯定されてしまう。
まさに人生の意味はあとづけなのです。
しょせんあとづけでしかないのですから、世間の評価に目をくらませてまで、他人のルールで勝負する必要などないのだと、本書を読んで私はつくづく思いました。
自分にできないことがたくさんあっても、そしてできなければできないほど、自分には何か人とは違ったところに「向いているもの」があるのだと思っていたのだ。
自分の人生と人の人生、その幸せ度を比較することなど絶対にできない。
できないけれど、比べたいのが人間だから、無理やり「年収」や「学歴」、「家の大きさ」や「持っているもの」など、さまざまな基準を作って比べようとする。でも、本当のところは、やはり比べようがないのだ。
ならば、自分の人生や運命というものを肯定するしかない。
結局はやはり「人は人、自分は自分」であり、自分のルールで生きていけばいいのです。
以下、私用メモ
●投資が金品の見返りを求めるものなら、消費は「満足感」や「幸福感」という見返りを求める行為と言える。
●人生はアートに似ている。成功も失敗もなく、あるのは好きか嫌いかだけだ。
●強い意志を持つことは素晴らしい。だが、本質を見失うと、本末転倒な頑固になりかねない。
●喜びは結果ではなく、プロセスの中になる
●失敗を防ぐとは、成長を妨げるということ
●流れに乗って舵を取る生き方
嘘つきは社長の始まり (サンマーク文庫 B- 113) | |
安田 佳生
サンマーク出版 2008-09-17 おすすめ平均 |
2 Comments
「千円札は拾うな」は読みました。
なかなか過激でおもしろかった印象があります。
著者の経歴には思わず笑ってしまいました(笑)
自分の生き方って大事ですよね。でも難しい。
僕も少し変わった経歴の人間ですので、自分の生き方を説明してもなかなか理解されないときがあります。
結局は自分の人生、自分で責任もてればそれでいいのかなって、さっき弟を説教して思いました(笑)
マックさん
過激さでは本書も負けないと思いますよ(笑)
一見とんでもないことを言いつつも、実は本質を突いているところが、
安田さんの魅力だなと感じます。
>結局は自分の人生、自分で責任もてればそれでいいのかなって、さっき弟を説教して思いました(笑)
なるほど、確かに言えてますね。
弟さんを説教ですか(笑)
私も4人兄弟の長男なので気持ちは分かります(^^;