マイケル・アブラショフの著書、「即戦力の人心術―部下を持つすべての人に役立つ」を読んだ。
マーカス・バッキンガムの「最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと」が最高のリーダー、マネジャー像を理論的に示したものなら、本書はその最高のロールモデルを示しています。
当事海軍の落ちこぼれだったベンフォルド艦の艦長に就任し、「この艦を海軍史上最高の艦にしてみせる」と決意し、自らが描いた未来の実現に向けて部下たちを巻き込むリーダーシップ。
ベンフォルドを引き継いだとき、私はこの艦を海軍史上最高の艦にしたいと思っていた。結果だけでなく、「正しいやり方」でそうすることが重要だった。(中略)そのための自己診断法は単純なものだ。こう自分に問いかけるだけである。
「もし、このことが明日の『ワシントン・ポスト』の一面に載って全米中に知られることになったら、それを誇りに思うだろうか、それとも、恥ずべきことだと思うだろうか?」
指導者にとって重要なのはチームの力であり、そのためには「集団の知」が必要なのだ。私は、部下が自分のチームの共通の目標を知れば、それだけ多くの強力を得られる―そして、よりよい成果を達成できることを知ったのである。
そして、組織をオーガナイズするときにはいつでも「部下の立場」を出発点にし、どうすれば部下が最大限の力を発揮できるかを考え、どうすれば部下が自らの仕事に誇りを持てるかを思考し、常に尊敬とフェアな姿勢を持って彼らに接するマネジメント。
それは、「部下の身になって、何が一番大事かを考えてみる」ということだ。
しかし、このシンプルな方針こそ、上司として成功するためには必要不可欠なものだと私は確信していた。
私の仕事は、部下が自分の可能性を最大限に発揮できるような環境をつくり出すことだけだった。適切な環境さえつくれば、団結した組織が成し遂げられるものにほとんど限界などないのだ。
人材をその能力に応じて適材適所に配置すれば無駄が減り、組織は効率よく運営されるようになる。
これ以降、私は目標を明確にし、それを行うだけの時間と設備を与え、部下がそれを正しく行うための適切な訓練を受けていることを確認しない限り、もう二度と命令を出すことはしないようにしようと、心に誓った。
私は彼らの最強の”応援団長”となった。
部下たちが大切な人間であることを実感できるよう、彼らへの感謝と自分がどれだけ助かっているかを伝える、褒める技術。
部下のために闘う姿勢。
だが、部下たちは、負けはしたが自分たちのために闘った私を支持してくれた。「自分たちの提案を大事にしてくれる上司」に対しては、部下たちは心を開き、信頼を寄せてくれるものなのだ。
ある部下が、「私たちはみんな、艦長が自分の次の昇進のことよりもわれわれを大切にしてくれていると思っています。」と言ってくれたからである。
凡庸なリーダーは、自分の部下のことを知ろうとしない。
(中略)
上司がつねに部下に送り続けなければならない唯一の信号は、一人ひとりの存在と力が自分にとっていかに大事であるかということである。
この英雄物語における私の唯一の役割は、部下の話に耳を傾け、彼のアイデアを評価し、それがよいものだと確信すると、その採用を懸命にアピールすることだった。
(中略)
才能に役職などないのだ。
「もうずいぶん長くここにいる。他の艦の乗組員たちが自由を楽しんでいる間も、きみたちが働いていることは承知している。それには理由がある。
海軍はベンフォルドをペルシャ湾で最も重要で、欠くことのできない艦と考えているのだ。われわれがいちばんすぐれているのだ。いちばんであるということは責任を伴うものだ。頑張ってくれてありがとう」
どれをとっても最高のお手本で、こんな上司がいたらどこまでもついていきたくなるだろう、そして自分も必ずこういうリーダー、マネジャーになろうと、涙を流しながら思わずにはいられませんでした。
常に手元において、いつでも振り返ろうと思います。
すべての部下を持つ人たち、そしていつかリーダー、マネジャーとして活躍したいと考えている人たちに強くお勧めします。
また、前述の「最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと」を先に読むと、更に理解が深まると思います。
余談ですが、これほどの内容にもかかわらず、アメリカで2002年に出版されてから翻訳されるまでに6年もの間があったというのは驚きです。
やはり、良質な洋書を原書段階で手に入れる仕組みを考えないといけませんね。
また、マックさんのブログでも本書が絶賛されています。
以下、私用メモ
そのために私は、「何をするにも必ずもっとよい方法があると考えよ」と呼びかけることにした。各部門における技術的な熟練度は、上司である私より現場の部下のほうが高いという前提をはっきりさせ、つねに部下に「きみがしている仕事で、もっとよいやり方はないか?」と聞いてまわったのである。すると、思いもしなかった画期的な回答が出ることもしばしばであった。
また私は、部下に仕事を楽しんで行うための提案をするようにも促した。
上司が送る信号は重要だ。自分が行うあらゆる決定や行動を通じて、部下にどう活動すべきかを教え込まなければならない。
公然と部下を叱りつけた前任者とは逆に、私はベンフォルドの艦内放送を使って部下をほめたり、新しいアイデアを分かち合ったり、自分たちの目標を説明したり、それぞれが共通の目的のために強力し合うことをオープンにしたのである。
そして、もし私が非生産的な仕事を生み出しているのだとしたら、私はそのことを知りたかった。もし私のしていることで部下に何かしら問題をもたらしているとしたら、私に伝えてもらいたかった。
(中略)
批評会で私が自分自身をさらすのを見て、部下たちも自分をさらけ出すようになった。
すなわち、「私はきみたちを見限ったりはせず、力になるつもりだ」というシグナルである。
部下にとってはミスやトラブルの報告ほどつらく、言い出しにくいものはない。部下が上司に報告することを恐れない信頼の気風を生み出すことは、組織にとって死活問題になり得ると言っても大げさではない。
「おい、今はきみが艦長だ。許可など取らなくていい。責任を持って自分でやるんだ」
さらに、とくに部下たちが本当にほめるに値することをしたときには、彼らの親に手紙も書くようになった。
即戦力の人心術―部下を持つすべての人に役立つ | |
Michael Abrashoff 吉越 浩一郎
三笠書房 2008-09 おすすめ平均 |
4 Comments
紹介ありがとうございました。
この本は本当に学ぶべきものがたくさんありました。
若い人にも読んで欲しいのですが、うちの上司にも是非読んで欲しい(笑)
マックさん
昨日先輩と食事した際にこの本を紹介したのですが、
>うちの上司にも是非読んで欲しい(笑)
まさにこんな感じで話してました(笑)
部下の欠点を見つけて叱ることが仕事だと思ってる人が、
多いみたいですね(^^;
ぜひとも手にとって読んでみたいと思いました。
吉越浩一郎さんが著者に名前を連ねているのも大変興味深いです。翻訳されたのかしら。
さねさん
是非読んでみてください、必ず役に立つと思います!
吉越さんは翻訳と解説をされてますね。
最後の「役者解説」部分は結構面白かったです。