ダニエル・ゴットリーブさんの著書、「人生という名の手紙」を読んだ。
本書は二十年間四肢麻痺患者として生きてきた男性が、自閉症を持って生まれてきた孫、サムに当てた32通の手紙でできている。
愛や家族とはどういうものなのか、成功と挫折とは何か、そしていずれサムが直面することになる、みんなとは「違う」ということがどういうことなのかについて、著者が35年間精神分析医として過ごした経験を背景に語られている。
そしてそれは最終的に、人間であることはどういうことなのか、生きるとはどういうことなのかという問にいきつく。
著者の深い洞察には頭が下がる。
いくつかの手紙は、まだ私にははっきりと答えの出る問題ではなかった。
君の体は完璧じゃない。君の脳も完璧じゃない。まわりの人たちとは違っている。
だけど、君の目を見て、君の愛らしさを見れば、君の母さんの言うとおりだと思うしかない。一番大切なことに目を向ければ、わかる―君はすでに完璧なんだと。
わたしは君と今この瞬間に生き、その瞬間に起きていることに気づいた時、大きな喜びを感じた。過去と自分が失ったものに気づいた時、痛みを感じた。そして、未来と自分が求めているものに気づいた時にも、やはり、痛みを感じたんだ。
つまり、大人の多くが苦しむのは、過去の人生について考えたり、この先、思いどおりの人生を生きようとするからなんだね。
だけど君はあの日、今、目の前にある人生を生きさえすれば、人生はずっと心地よいものになると、わたしに気づかせてくれたんだよ。
わたしは何度か危篤状態になったことがある。いまでも死を身近に感じている。
でもね、サム。私はずっと、死は問題ではないと考えてきた。ちゃんと生きていないことのほうが問題なんだとね。
四肢麻痺であるとか、自閉症であるとかいうことは、ただその人がそれを「抱えている」ということであって、それがその人の本質ではない。
人の本質は別のところにあって、それさえ完璧であれば問題はないのだというメッセージが伝わってくる。
人と比べるといろいろと自分が劣っている部分も見つかるかもしれない。
世の中には勝ち組だとか負け組みだとか、変な価値観で人を区別する風習もある。
でも、一番重要な本質を見失わない限り、人は安らぎと心地よさを得られ、ちゃんと生きていくことができるのかもしれない。
その本質を、これから見つけていかなければならないと思った。
人生という名の手紙 | |
児玉 清
講談社 2008-06-20 おすすめ平均 |
2 Comments
本書とはじっくり向き合いたいです。
スキル云々ではなく人間力、人格に関わってきますからね。
生きるという事をもう一度深く考えてみたいと思います。
ありがとうございます!
BJさん
私も同感です。
何年後かにもう一度読んだときに、自分の受け止め方が少しでも変わっているよう、
これからずっと考えていくことになるテーマになりそうです。