予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 | |
熊谷 淳子
早川書房 2008-11-21 おすすめ平均 |
ダン・アリエリーの『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』を読みました。
経済学は、私たちが常に合理的に選択することを前提に成り立っています。
しかし本書は、実は人はある特定のパターンの中に陥ったときに不合理な選択をしてしまうこと、そしてそれを一度ならず何度も繰り返してしまうことを科学的に証明しています。
この本で紹介した研究からひとつ重要な教訓を引きだすとしたら、わたしたちはみんな、自分がなんの力で動かされているかほとんどわかっていないゲームの駒である、ということだろう。わたしたちはたいてい、自分が舵を握っていて、自分がくだす決断も自分が進む人生の進路も、最終的に自分でコントロールしていると考える。しかし、悲しいかな、こう感じるのは現実というより願望―自分をどんな人間だと思いたいか―によるところが大きい。
自分の思考や決断のクセを見直すことができる、非常に興味深い一冊でした。
以下、気になった箇所を紹介します。
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● 相対性の真相
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人間は、ものごとを絶対的な基準で決めることはまずない。ものごとにどれだけの価値があるかを教えてくれる体内計などは備わっていないのだ。ほかのものとの相対的な優劣に着目して、そこから価値を判断する
例えば私がここで以下の2冊の本をオススメするとします。
その中からどちらか一冊を購入できると、仮に考えてみてください。
抜擢される人の人脈力 早回しで成長する人のセオリー
作者: 岡島悦子
出版社/メーカー: 東洋経済新報社
発売日: 2008/12/12
メディア: 単行本(ソフトカバー)
スピード・ブランディング―普通の人がブランドを確立し、成功を加速させる
作者: 鳥居祐一
出版社/メーカー: ダイヤモンド社
発売日: 2008/12/05
メディア: 単行本
それぞれ人脈術とパーソナル・ブランディング論の良書で、どちらも同じくらいオススメだと言われたら、少し迷いませんか?
では、この場合はどうでしょう。
今回は3冊の本をオススメします。
この中からどれか一冊を購入できると、仮に考えてみてください。
抜擢される人の人脈力 早回しで成長する人のセオリー
作者: 岡島悦子
出版社/メーカー: 東洋経済新報社
発売日: 2008/12/12
メディア: 単行本(ソフトカバー)
デキる人は皆やっている 一流の人脈術 (アスカビジネス)
作者: 島田昭彦
出版社/メーカー: 明日香出版社
発売日: 2008/11/07
メディア: 単行本(ソフトカバー)
スピード・ブランディング―普通の人がブランドを確立し、成功を加速させる
作者: 鳥居祐一
出版社/メーカー: ダイヤモンド社
発売日: 2008/12/05
メディア: 単行本
上2冊は人脈術の本で、下はパーソナル・ブランディングの本です。
人脈術の本に関しては、上の本のほうが、下の本のほうよりも、個人的に非常にオススメです。
こう言われると、なぜか妙によりオススメな人脈術の本を、選びたくなりませんか?
つまり、おとりであるA’を加えることで、Aとの単純な相対比較ができるようになり、おかげで、Aが、A’に対してだけでなく、ひいては全体のなかでも優れているように見えることになる。そのため、A’を選択肢に含めると、たとえだれもそれを選ばなくても、人々が最終的にAを選ぶ確立が高くなる。
もしかしたら私たちも、おとりA’の存在によって、A’を選ばないにしても、最終的な決断に影響を受けているかもしれません。
例えば1流のストライカーと、2流のストライカー、1流のディフェンダーの中から一人採れるとしたときに、現在のチーム状況を考えて本来ならディフェンダーの補強が必要な場合であっても、もしかしたらおとりの2流ストライカーの影響を受けて、1流ストライカーが突然魅力的に映ってしまうクラブチームとか…。
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● ゼロコストのコスト
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例えばここに、500円の美味しいコーヒーと、250円のあまり美味しくないコーヒーがあるとします。
お金に余裕があれば、ちょっと余計に払ってでも美味しいほうを飲みたいという人も多いと思います。
しかしここで両方のコーヒーが250円ずつ値下げしたとしたら、どうでしょうか。
美味しいコーヒーは250円で、あまり美味しくないコーヒーはなんと無料です。
どうでしょう、先ほどは美味しいコーヒーを選んだ人も、今回は美味しくないけど無料のコーヒーを選びたくなりませんか?
でも、差額は250円のまま、変わっていません。
値段ゼロは単なる値引きではない。ゼロはまったくべつの価格だ。二セントと一セントのちがいは小さいが、一セントとゼロのちがいは莫大だ。
もしあなたが商売をしていて、この点を理解しているなら、たいしたことができる。お客をおおぜい集めたい?何かを無料!にしよう。商品をもっと売りたい?買い物の一部を無料!にしよう。
私たちも知らぬ間に、無料の罠によって決断をゆがめられているかもしれません。
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● 社会規範のコスト
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じつは、お金の話が出たとき、弁護士たちは市場規範を適用したため、市場での収入に比べてこの提示金額では足りないと考えた。ところが、お金の話抜きで頼まれると、社会規範を適用し、進んで自分の時間を割く気になった。
これは非常に面白いですよね。
例えば普段なら講演料100万円を必要とする著名な講演家がいるとします。
この人に、学生のために30万円で講演をしてほしいと頼んでも、市場規範を適用されてしまい、ギャラが足りないと断られるかもしれません。
しかしここで、「これから未来を創っていく有望な学生たちに、無料でチャリティー講演をやって欲しい」と頼めば、この人は社会規範を適用し、もしかしたら了承してくれるのかもしれません。
中途半端にお金をからめて市場規範を適用するよりも、お金の話は一切出さずに社会規範を活用したほうが、いい結果を得られる場合も多いのかもしれませんね。
ただこれは、非常に怖い要素を含んでいます。
企業が社会規範で考えはじめれば、社会規範が忠誠心を育てることに気づくだろう。さらに重要なことに、社会規範は人々を奮起させる。柔軟で、意識が高く、進んで仕事にとりかかるという、企業が今日必要としている従業員になろうと努力する気にさせる。それが社会的関係のもたらすものだ。
確かに企業が社会規範で考えはじめれば、従業員は意欲的になり得ると思います。
ただこれを企業が悪用すると、社会規範を振りかざして従業員に不当に長時間労働をさせたり、少ない賃金、もしくはサービス労働を強いる可能性もないとは言えません。
実際にそういう企業は、ありますよね。
社会規範を重んじることは大切ですが、くれぐれもそれによって不当な扱いを受けないよう、私たちは常に気をつけなければなりませんね。
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予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 | |
熊谷 淳子
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One comment
エリートコース…。このような考え方、僕も嫌いです。
まあ、すでにエリートコースから外れている僕にすれば関係のない話ですが(笑)
やっぱり努力するなら、自分のたてた目的に向かって、ですね!
愚痴らずに、自分の出来ることをコツコツと…。
当たり前のことを、再確認することが出来ました!