世界連鎖恐慌の犯人 (Voice select) | |
堀 紘一
PHP研究所 2008-12-18 おすすめ平均 |
堀紘一さんの『世界連鎖恐慌の犯人』を読みました。
本書には今起こっている一連の大恐慌が何故起こったのか、いったい何がそれを引き起こしたのかが非常に分かりやすく書かれているのですが…
私は本書を読んで、インベストメントバンクやヘッジファンドでは働きたくないなと思いました。
「リーマン・ブラザーズが破綻したし、外資は今後危ないから…」という理由ではありません。
もちろん全員が悪ではないと思いますが、インベストメントバンクやヘッジファンドで働いている人たちの価値観は、到底共感できるものではないからです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
● サブプライムローン
――――――――――――――――――――――――――――――――――
返済能力のない所得の低い人に対し、不動産の値上がり益を担保にしたサラ金を実行したことが、サブプライムローン問題の実態だ
何億円も稼ぐ人たちが、サブプライム層の人たちが苦しいなかから支払っているローン金利にまで群がるなんて、私にはまったくどうかしているとしか思えない。
そのうえ、サブプライムローンで思惑を外して、世界中を大不況に陥れるきっかけをつくってしまった。
そもそもインベストメントバンクで働いている人たちは、大金を稼いでいます。
しかも本書によると、その中でシニア層にもなれば年収億単位は当たり前で、何十億も稼いでいる人もいるという、一億層中流社会と言われる日本では考えられないような額を儲けているのです。
私はお金(もしくは利益)というのは、世の中への貢献に対する対価であると考えています。
なので、大金を稼いでいる人たちが、大量の弁護士を抱えながら怪しい金融商品を生み出して、世の中に貢献するどころか大不況のきっかけを作ったと言うのは、到底納得できるものではありません。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
● 虚構の資金
――――――――――――――――――――――――――――――――――
私たちにとって一京円などというのは、お金ではない。単なる数字だ。しかし、現実社会に存在しないお金を動かして儲けているヘッジファンドやインベストメントバンクたちには、一京円もお金のうちということになる。これが虚の経済の恐いところだ。
対して実の経済が動かしているお金は、世界中の何もかもすべてを集めてきても、五千兆円しかない。
世界中のお金をかき集めても五千兆円しかないのに、何故彼らは一京円もの大金を扱えるのか。
それは彼らがレバレッジをかけているからです。
ただ、このような虚の資金が世の中に広く出回っていて、それが予想に反して価値を失い、紙くず同然になったとしたら、これはとんでもないことです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
● 拝金主義者
――――――――――――――――――――――――――――――――――
儲けるためには手段を選ばない。いや、手段を選んではならない。一億円稼いだ人は、一千万円しか稼がなかったヤツの十倍偉い。稼いだ金額以外に評価の基準はない。バレさえしなければ、犯罪行為をして稼いだ者は、正直にやって稼げなかったヤツよりだんぜん偉い。
すべてのインベストメントバンクがそうだとはいわないが、いまや彼らの多くがそういう人間になってしまっている。
こういう価値観だから、サブプライムローンなどという商品を生み出せるわけですね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
● 金融資本主義から産業資本主義へ
――――――――――――――――――――――――――――――――――
アメリカの金融資本主義の世界では、お金の増えそうなところにお金を入れる。(中略)大事なのは「どこに入れれば、お金がいちばん増えるか」である。
この考えは徹底的に間違っている。本来大切なのは、「どこに入れれば、いちばん人の役に立つか」を考えることである。
まだまだ大恐慌は続くのでしょうが、もう一度働くことに対する価値観、お金に対する価値観を見直すことが、一連の愚行から学べる最大の教訓ではないでしょうか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
世界連鎖恐慌の犯人 (Voice select) | |
堀 紘一
PHP研究所 2008-12-18 おすすめ平均 |
2 Comments
ことごとく同感です。
価値の評価ツールである金というものを、目的にした結果ですね。
道具を集めても何の意味も無いのでですよね。
どの世界にもコレクターはいるものですが内輪だけで楽しんでもらいたいものです。
畑中鈍龍さん
まさにそのとおりですよね。
本書を読んで私は、
今回の一連の出来事をニュースなどで表面的に理解するのではなく、
しっかりとその本質を理解して、
働くこと、お金を稼ぐことの意味を今一度考え直すことが、
私たちには必要なのではないかと思いました。