横田尚哉さんの著書、「ワンランク上の問題解決の技術《実践編》 視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ」を読んだ。
今まで問題解決の手法に関する著書をいくつか読んだが、何かが足りなく、どうも物足りないと感じていた。
本書を読んでそれが何だったのかが分かった。
今までの問題解決手法は、現状を分析し、過去のフレームワークに当てはめて解決策を導き出す「過去の再現化」であり、問題を解決することそれ自体が目的だった。
しかし、本書で扱う「ファンクショナル・アプローチ」は、そもそもどんな状態を求めているのかという、未来の達成状態のイメージから逆算して解決手段を考える、より本質的な「未来の具現化」を目的とした問題解決手法なのだ。
そして、まさにこの「未来の具現化」が、ファンクショナル・アプローチをワンランク上たらしめる理由なのだ。
なぜならば、このアプローチは単なる問題解決が目的ではなく、未来の具現化が目的であるが故に、目的の達成のためならば手段は選ばず、ゼロベースで思いもしなかった発想が出せるからだ。
競争社会ではどうしても他者との競走に目がいってしまいがちだが、そもそも自社の製品・サービスの機能は何のためにあるのを深く掘り下げてみることが、顧客思考の徹底に自然に結びつくのではないだろうか。
この手法を理解し、日頃からファンクション(機能)に着目する習慣をつけ、アイデアを発想する練習をすれば、問題解決はもちろん、日常の様々なことに対して本質的にアプローチすることができそうだ。
アイデアの質と量、組み合わせのバリエーションを増やす上で本を読んだり、人と合ったりして知識・情報・刺激をインプットしておくとなお良いと思う。
ファンクショナル・アプローチの思考ルール
●固定観念にしばられず、前回と違った方法を試してみる
・別のやり方がないだろうか?
●手段にこだわるのではなく、改善点に焦点を当てる
●「見落とされている改善点」を探す
●過去を手放し、未来のあるべき姿から発想する
・「なぜ?」ではなく「何のために?」
ファンクショナル・アプローチの手順
●ステップ1準備
1.5つのツールを準備する
・解決しなければならない問題
・小さな付箋紙とペン
・一緒に手伝ってくれるメンバー
・まとまった時間
・解決への情熱
2.効果的な成果を出すための原則
・相手の立場で考える(使用者優先の原則)
・機能の視点で考える
・過去ではなく未来で考える
・メンバーとともに考える
・価値を高めることを考える
価値=アウトプット÷インプット
3.解決すべき対象を認識する
・パーツに関すること
・関与者に関すること
・要求に関すること
・問題・制約に関すること
・投入資源に関すること
4.対象をパーツに分解する
●ステップ2分解
1.ファンクションを定義する
・ファンクションを名詞+他動詞で表現する
・あくまでそのパーツが使用者に対して果たそうとしているファンクションを定義する
2.ファンクションを整理する
・ファンクションを付箋紙に書く
・任意のファンクションを手に取る
・そのファンクションの目的を探す
目的に相当する上位ファンクションを見つける
・上位ファンクションを確認する
下位ファンクションがなければ上位ファンクションは機能しないかどうか
・さらに上位ファンクションを探す
・残りのファンクションを全て関連づける
・最上位ファンクションで全体を一つにまとめる
・不足ファンクションを追加する
3.キー・ファンクションを抽出する
・キー・ファンクションとは本質
・キー・ファンクションが達成されれば、手段は何でも良い
・キー・ファンクションはアイデア発想の原点
・クリティカル・パスを変えてしまう
4.リソースとパフォーマンスを測定する
・キーファンクションの価値を測る
・インプット量とアウトプット量を測定し、チャートにプロットする
5.アプローチ・チャートを作成する
・インプット量>アウトプット量となっている部分などを探し、改善点を見つける
●ステップ3創造
1.アイデアを発想する
・ブレインストーミングなどの手法を利用
・ファンクションを他の手段で達成できないか?
2.アイデアを整理する
・有用性をチェックする
・グルーピングする(付箋紙を利用)
●ステップ4洗練
1.アイデアを練る
・アイデアの利点を見つける
・利点を伸ばすアイデアを創造する
・アイデアの欠点を見つける
・欠点を取り除くアイデアを創造する
・追加されたアイデアを取り込んで新しいアイデアにする
・さらに利点と欠点を見る
2.アイデアを組み合わせる
3.価値を確認する
4.効果を評価する
・解決前後を比較する
・解決策を実行するとは、リリースすることであり、ひとり立ちさせること
うまく実行されているか?
確実に理解されているか?
新たな障害が発生していないか?
疑問を持っている人がいないか?
パフォーマンスが予定通り提供されているか?
リソースが想定どおりに収まっているか?
ワンランク上の問題解決の技術《実践編》 視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ | |
横田 尚哉
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2008-07-15 おすすめ平均 |
4 Comments
GE流とありますが、six-sigmaと関連があるのでしょうかね?
ファンクショナル・アプローチ。
気になります。
Checkしてみますね!
ありがとうございます!
BJさん
six-sigmaとはまた別物のようですね。
こちらはもっと古く、1947年にGE社で生まれ、
VE(バリュー・エンジニアリング=価値工学)として、
その後フォード、トヨタ、松下電器などに広く伝わったようです。
是非、チェックしてみてください!
この本の著者です。
lemoned-icecreamさま
取り上げていただき有難うございます。
「未来の具現化」のポイントに気づいていただき光栄です。
覚えておいて損のない考え方です。
是非、ワンランク上を目指してください。
BJさま
シックスシグマとファンクショナル・アプローチは、
とても密接な関係にあります。シックスシグマは、
VEの影響を大きく受けていると考えられます。
VEから発展したテクニックは他にもあります。
是非、ご覧いただければと思います。
横田尚哉さん
コメントをいただき、ありがとうございます。
目の前のことで視野が狭くなってしまったときは、
「そもそもどんな未来にしたいのか」を
常に思い起こそうと思います。
ありがとうございます!