クラウド グーグルの次世代戦略で読み解く2015年のIT産業地図 | |
石田 晴久 國領 二郎
インプレスR&D 2009-02-26 おすすめ平均 |
小池良次さんの『クラウド グーグルの次世代戦略で読み解く2015年のIT産業地図』を読みました。
本書は2010~2015年のIT産業の展望を、米国のインターネット・通信業界を専門とするジャーナリストである著者が語ったものです。
『自分の仕事をつくる』にて、
優れた技術者は、技術そのものでなく、その先にかならず人間あるいは世界の有り様を見据えている。
とありましたが、IT業界に関わる人であれば本書のような書籍をきちんと読み、自分なりの業界のビジョンや、その中での自社・自分の立ち位置をしっかりと見えるようにしておくことは、非常に大切なのではないでしょうか。
さて、2010年~2015年のIT産業の中心となるもの、それは「クラウドコンピューティング」です。
グーグルは検索広告とは無関係ともいえる巨大投資を続けている。海底ケーブルに、ワイマックス網、主要都市での光ファイバー買い漁り、最先端通信機器の社内開発、米航空宇宙局との提携、そして原子力発電所―こうしたニュースをグーグルは、決して説明しようとしない。
これらすべては同社の次世代事業「クラウドコンピューティング」のインフラ(基盤)整備につながる。
今でこそワードやエクセル、パワーポイントなどのプログラムは、パッケージソフトという形で購入して、パソコンにインストールして使います。
しかしクラウドコンピューティングの時代になると、こういったものはインターネットからプログラムを呼び込むような形になるようです。
こうなるとパソコンは「自宅でインターネットを使うための端末」という位置づけになり、パッケージソフトの必要性はかなり低くなるでしょう。
同様に携帯電話も、今後は電話機能はあくまでおまけの、「外出先でインターネットを使うための端末」という位置づけに近づくのではないかと思われます。
となると、iPhoneや近いうちに出てくると予想されるGoogleのアンドロイドをはじめとしたスマートフォンの需要が、大きくなりそうです。
で、この「クラウドコンピューティング」という来るべき新しい世界において、今優位なポジションを築いているのがGoogleなのだそうです。
マイクロソフトがパッケージソフトから抜け出せない一方、グーグルはクラウドコンピューティングという脱パッケージソフトの世界を作ろうとしている
ソフトウェアはハードウェアから逃れ、OSから解放され、データフォーマットの束縛からも、いま逃れようとしている。最先端のソフトウェアは、インターネットで必要なときに必要なプログラムを呼び込み、誰にも意味が分かるデータフォーマットを使って処理をする。こうして私たちはいま、本確的なネットワークデータベースのソフトウェア世代に足を踏み入れようとしている。これがパッケージソフトウェアの次に来る時代、つまりクラウドコンピューティングの時代だ。
グーグルは、マイクロソフトがパッケージソフトで寡占的な地位を得たように、ネットワークデータベースソフトウェアでデファクトスタンダード(自然発生的な標準規格)の位置をねらっているのではないだろうか。
クラウド時代は二〇一〇年あたりから本格化し、二〇一五年ぐらいには広く普及すると予測している。
つまり、2015年にはグーグルによるクラウドコンピューティング帝国が誕生するかもしれないわけです。
このクラウドコンピューティングの時代になると、何が起こるのでしょうか?
●社内からサーバーがなくなる
●従業員は必要なアプリケーションを自分で書くようになる
●ソフトウェアとコンテンツの区別がなくなる
●サービスにおいて、パソコン・携帯電話・テレビの違いがなくなる
サーバーがなくなると、システム管理者の仕事内容は大きく変わり、場合によっては居場所がなくなる可能性もありますね。
私が4月から入社する会社もシステム運用に関わるパッケージソフトを販売しているので、これはかなり重要なテーマなのではないかと思いました。
さて、クラウドコンピューティングの時代を前にして、日本はどういう状況なのでしょうか。
グーグルが、日本で大卒のソフトウェアエンジニアを探すと「まともに使える人がほとんどいない」ということになってしまったらしい。
クラウドコンピューティングでは、社内システムをパーズやサーズを使って構築しなければならないが、従来のように情報システム部門に任せるのではなく、システム開発は社員全員が参加する総力戦となる。そのため企業のソフトウェア開発力が現在にも増して競争力を左右することになる。
「ソフトウェア産業が死滅した」と言われるほど、米国に比べるとソフトウェア開発力が貧弱な日本は、結構ピンチかもしれませんね。
逆に言えばITに詳しくなっておけば、今後の日本ではますます重宝される人材になれるかもしれません。
企業としては、そういう人材を是非とも確保しておきたいところでしょう。
こういう本は、読めば読むほど将来の展望が見えてきて、面白いですね。
いろいろと自分の可能性を考えていると、思わずワクワクしてきます。
この本はかなりの当たりでしたが、他にも何かないか、探してみようと思いました。
クラウド グーグルの次世代戦略で読み解く2015年のIT産業地図 | |
石田 晴久 國領 二郎
インプレスR&D 2009-02-26 おすすめ平均 |
2 Comments
卒論のテーマにグーグルを選んだ僕としては、このような話題には飛びつきます(笑)
やっぱりグーグルの評価は高いですよね。正直グーグルがネットの支配者になると言われても、それほど驚かないくらいです。
何と言ってもグーグルは日本の企業とはベクトルが違いますよね。グーグルの事業は短期的に見れば無駄としか思えないものが多くありますから。
グーグルひいてはIT業界、大注目です!
ぼってぃーさん
えぇ、短期で見れば無駄だらけですね。
なんといっても原子力発電所ですから(笑)
今後のITがますます楽しみになりました!