クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった | |
野村総合研究所 城田 真琴
東洋経済新報社 2009-02-06 おすすめ平均 |
城田真琴さんの『クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった』を読みました。
本書のテーマである「クラウドコンピューティング」、これはうちの社内でもしばしば話題になっています。
今後クラウド化がますます進行していくのはほぼ間違いないので、特にIT業界に属する人にとっては知っておかなければならない概念でしょうね。
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● クラウドとは
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クラウド・コンピューティングでは、Webブラウザさえあればインターネットの雲の中にあるコンピュータ・リソースにいつでもアクセスし、必要な分だけのCPU能力やストレージ(ハードディスクなどの外部記憶装置)、アプリケーション・ソフトウェアを利用できる。その際、サーバやストレージが物理的にどこに存在するかを意識する必要はない。
必要なCPUやストレージをネットの向こう側で確保してくれるとなると、今後はPCのダウンサイジングが進むことになりますね。
高性能なCPUや大容量の記憶領域などが不要になり、ウェブブラウザさえ使えれば問題ない時代になるのかもしれません。
PaaS(Platform as a Service)(中略)これは、これまで自社アプリケーションの実行基盤として利用していたプラットフォームをネットワークサービスとして広く一般に開放し、ユーザー独自のアプリケーションの実行プラットフォームとして利用してもらおうというものだ。(中略)
PaaSでは、開発ツールやテスト環境もSaaSプロバイダから提供されるほか、起動後の運用管理もSaaSプロバイダが責任をもってくれる。
例えば、グーグルの「グーグル・アップエンジン」や、セールスフォース・ドットコムの「フォース・ドットコム」などがPaasに当たりますね。
クラウド・コンピューティングを利用すれば、ビジネスの成長に合わせて必要な分だけのコンピュータ・リソースを利用することができる。予測のつかないピーク時のトランザクションに合わせて、事前に必要以上のサーバやディスクを購入する必要はなくなる。一方で、必要なときにはわずか数分でリソースの追加が可能である。
こうなると、今後はネット起業のハードルがグンと低くなります。
逆の視点から見れば、今後はアイデアさえあれば個人でもどんどん活躍できる時代になるので、ビジョンの見えていない企業は規模に関係なく、居場所がなくなるかもしれませんね。
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● クラウドをリードする企業
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クラウド・コンピューティングという新たなコンピューティング革命をリードしているのは、メインフレームやクライアント/サーバ時代の主役であったIBMやマイクロソフト、オラクルなどのIT業界の巨人たちではない。グーグルやアマゾン、セールスフォース・ドットコムといった、インターネットをベースとしたビジネスを展開する「クラウド・ネイティブ」なネット起業である。
現時点ではまだまだマイクロソフト・オフィスには適わないものの、将来的にはグーグルがウェブ上で提供する無料のサービスが、マイクロソフトのパッケージプロダクトのシェアを奪うことになるかもしれません。
必要なサービスがウェブ上から利用できるようになると、パッケージプロダクトの価値は間違いなく下がります。
自社を支えている事業が今後は足かせになる可能性が高いマイクロソフトにとっては、クラウド化はかなり厳しいですね。
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● クラウド時代の企業のあり方
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「コア業務への資源集中こそが企業の競争優位性を高める方法であり、それ以外の業務(コンテクスト業務)はすべてアウトソースするべきである」
要するに、差別化できる自社のユニークな部分に資源を集中して、後の部分はクラウドが提供する標準化されたサービスを低コストで利用するのが望ましいということですね。
ここでいう「コア」とは、企業競争力の源泉となり、永続的な差別化を可能にする企業活動であり、それ以外の活動はすべて「コンテクスト」として定義している。
一方ムーア氏が、コンテクスト業務において勝利するアプローチとして推奨しているのは差別化を図ることではなく、「できるだけ標準的なやり方で、効率を最優先して遂行すること」である。
ただ、クラウド・コンピューティングが万能かというと、そういうわけではありません。
サーバやストレージを外部に委託するため、企業の機密情報をそこに保管したり、顧客情報を載せたりする際には、そのサーバやストレージを管理しているサービス提供側がすべての機密情報を見ようと思えば物理的には見ることが出来てしまうのです。
この「不透明性」の問題にどう対処できるかが、今後のクラウド化の流れを大きく左右しそうですね。
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クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった | |
野村総合研究所 城田 真琴
東洋経済新報社 2009-02-06 おすすめ平均 |
2 Comments
PaaSという言葉は初めて聞きました。
「クラウド」。急速に発展していきそうですよね。このテーマについてキャッチアップしていくかどうか、態度を決めかねています。
そんななか、TAKUさんのクラウドに関係する記事はとてもおもしろいです!勉強させていただきます!
ぼってぃーさん
この分野は非常に面白いですよ!
ちなみにPaaSのほかにも、HaaS(Hardware as a Service)というものもあるようです。
クラウド化が進むということで、ますますiPhoneがほしくなってきたのですが、お金が…(笑)