原田隆史さんの著書、「カリスマ教師の心づくり塾」を読んだ。
多くの問題を抱えた学校に赴任し、捨て身の教育を実践。得意の陸上競技を通じて生徒たちの心を変えて、在職7年間で13回の日本一に導いた。子どもたちの心のコップを上向きにし、夢や目標を与えて、自立型人間に変えてきたその手法とは?現役教師1400人が学び、企業研修でも採用が相次ぐ、原田式心づくりの指導法を紹介。
以上は裏表紙に書かれた紹介文である。
著者の教育理念は、「日本をよりよくする自立型人間の育成」である。
自立型人間というのは、理念、思い、志を持って、自ら定めた目標に向かって努力する人間のことです。夢に向かって突き進んでいく人間、と言い換えてもいいでしょう。そして、生み出した成果をシェア(共有)し、相互支援していける人間のことです。
では著者はいかに子どもたちを自立型人間に育成してきたのかというと、そこにあるのは徹底した「Plan-Do-Check-Action」だった。
陸上部において著者は、子どもたちに繰り返し日誌を書かせた。
その日誌には陸上日本一を目指すために今日自分が何をやるべきかをまずは書く。
そして実際に一日を過ごした後、計画をどれくらい達成できたのかを確認し、出来た部分と足りなかった部分を把握する。
そして次の日に取り組むべき改善案へとつなげる。
その繰り返しにより日々自分と向き合い、練習の制度を向上させる機会を与えたのだ。
目標を設定する→今日やるべき行動に落とし込む→実行できたか毎日チェックし、精度を上げるというサイクルをまわし続けることを教えることで、まさに「目標に向かって努力する人間」を育てたのだ。
しかし、なぜ子どもたちは著者を信頼し、最後までついていくことができたのか。
そこには確かな「人間力」があるのではないかと思う。
教育の現場には、いろいろと困難が起こる。
厳しく生徒を叱ると文句を言ってくる親もいれば、暴力的で注意するとこちらが怪我をさせられかねないような生徒もいる。
そういう事態を前にしても、自分の教育理念を決して曲げず、芯の通った行動を実践して見せたからこそ、子どもたちから信頼されたのではないかと思う。
では、どうしたら常に自分に信念にのっとった行動が出来るのか。
ここでもやはり、「Plan-Do-Check-Action」の繰り返しなのではないかと思った。
理念や目標、価値観を明確にすることは当然重要だ。
しかし、明確にすればいつでもそれを貫けるわけではない。
困難な状況に直面すれば視野も狭くなるし、楽なほうに逃げたくもなる。
そんなときでも自分の信念を貫く強さ、人間力は、すぐに身につくものではない。
それは、日々の訓練で少しずつ向上させなければならないのではないか。
人間の意志の力というのは、弱いものだと思う。
だからこそ、毎日毎日自分の行動を振り返り、出来た部分と出来なかった部分を確認し、明日の改善へとつなげるサイクルを繰り返すことで、行動の精度を地道にあげていくしかないのではないだろうか。
理念や目標、価値観というものは、ある意味勉強することで向上させることが出来る。
しかし、それをいついかなるときも迷わず実践するための「人間力」は、やはり日々の訓練でしか身につかないのではないか。
人間力について深く考えさせる、良書だった。
カリスマ教師の心づくり塾 (日経プレミアシリーズ 9) | |
原田 隆史
日本経済新聞出版社 2008-07-09 おすすめ平均 |
2 Comments
>自立型人間に変えてきたその手法とは?
興味深いですね!
よく今の時代は指示待ち人間が多いといいますが、
仕事自体の細分化で、普段から‘考えて’仕事をする
機会がなくなってきている事も、理由としてあるかな
と思っています。
要は、人間力としての自立性の低下ではなく、
ただの訓練不足だということです。
PDCAサイクルの徹底により、気づきの機会を
仕組みとしてデリバリーすることが
会社として、必要になっているのでしょうね!
ありがとうございます!
早速注文しました(^_^)/
>PDCAサイクルの徹底により、気づきの機会を
>仕組みとしてデリバリーすることが
>会社として、必要になっているのでしょうね!
まさにそのとおりなのかもしれませんね。
原田さんは「日誌」を書かせていたそうですが、
今の企業には社員に毎日「日報」を書かせて自らを振り返ってもらい、
自立を促してあげることが必要なのかもしれません。
熱い本なので、読むときはティッシュを忘れずに!