マシュー・ケリーの著書、「ザ・ドリーム・マネジャー モチベーションがみるみる上がる「夢」のマネジメント」を読んだ。
社員が仕事にも、会社にも、一緒に働く仲間にも愛着が持てなくなり、業務効率が上がらないまま、高い離職率に悩まされる企業。
この、士気の低下へと向かう悪しき傾向を打破し、企業の競争力を劇的に改善する「ドリーム・マネジャー・コンセプト」、それは社員一人ひとりの現在の仕事と夢の実現とをつなぐ架け橋をつくることでした。
昨日たまたま、後輩とこんな会話をしました。
後輩「○○○(某サッカーJ2のクラブチーム)って、いつもちょっといい成績を残すといい選手をすぐに引き抜かれちゃって、またチームが弱体化するの繰り返しで、なかなか強くならないんですよね。有望な若手がいてもすぐに移籍しちゃうんですよ。なんとかならないですかね?」
私「チームに中長期的なビジョンがないのが原因じゃない?チームの未来と選手の望む未来が合致しなければ、より待遇のいいチームに選手が行くのも当然だよね。『我々は2012年のJ1優勝を目指して、才能のある若手主体の熟成路線のチーム作りをする』みたいな具体的な未来像に、説得力のあるプランが伴えば、そのプロジェクトに共感した選手たちが集まってくるんじゃないかな。」
自分の望む未来が今のクラブチームにないと分かれば、選手は移籍してしまいます。
同様に、自分の望む未来が今勤めている企業にないと分かれば、社員は辞めていくか、モチベーションを失うかのどちらかだと思います。
「問題は、仕事に未来が見出せないことだと思います」
ちなみに本書にもサッカーチームを比喩にする場面が何度かあるのですが、何か縁を感じますね。
「(中略)夢こそが、その架け橋なんだ。われわれはこれが先のない仕事なんかじゃないと彼らに納得させる必要がある。そしてそうするには、ここで働くことが自分の望む未来につながると具体的に示すことこそ、唯一の方法だ。」
本書ではその具体的な実行作として、「ドリーム・マネジャー」という新しいポストを用意します。
簡潔に言うと、彼らは従業員一人ひとりと面接し、彼らの夢をたずね、それを仕事を通してどうやって実現していくか、一緒にプランを考えるわけです。
小さい頃は誰でも何か夢を持っていたと思います。
私も「サッカー日本代表になってワールドカップで優勝する!」と本気で思ってました。
その時「一流の選手たちはみんな毎日一生懸命練習しているんだよ。だから上手になりたければ、毎日練習しよう」という具合に、どうすれば夢が実現するのかを一緒に考えてくれるような人が周りにいたら心強いですよね。
しかし現実には、「そんなのになれるのはごく一握りの天才だけだから、お前には無理だ」とか、「世の中そんなに甘くない」と夢を実現できない根拠をたくさん知らされて、いつの間にか、
「(中略)ところが人は、生きるための闘いに足をとられて、夢を見ることをやめてしまうことがある。そしてやめてしまったが最後、静かな失望の中で生きるようになり、日々の生活から少しずつ情熱とエネルギーが失われていくことになります」
という状態になってしまいます。
だからこそ、再び夢を思い起こさせられ、その実現を支援してもらえたとき、社員が企業に感じる恩威は計り知れないものがあり、それが強いモチベーション、さらには忠誠心にまでつながるはずだという著者の信念に、私は強く共感します。
社員が夢への情熱とエネルギーを取り戻し、かつ今の仕事がその夢の実現につながるのだと信じることが出来れば、当然その情熱とエネルギーが仕事に向けられるようになる、とても簡単な理論です。
経営者、マネジャー職の人に、強くお勧めしたい一冊です。
また、個人レベルでも、マインドの近い友人と定期的に集まって、お互いの夢とその進捗状況について話し合ったり、アドバイスし合ったりするのも効果的だと思います。
以下、私用メモ
●人は会社のために存在しているわけではない、会社が人のために存在する
●夢は人それぞれなので、自分の考えを押し付けないこと
●やって当然と扱われることを人は好まない
●家族だからこそ、巣立ちを認めなければならない
ザ・ドリーム・マネジャー モチベーションがみるみる上がる「夢」のマネジメント | |
大野八生 橋本夕子
海と月社 2008-10-15 おすすめ平均 |