眠れなくなる宇宙のはなし | |
佐藤勝彦
宝島社 2008-06-21 おすすめ平均 |
佐藤勝彦さんの『眠れなくなる宇宙のはなし』を読みました。本書を読んで私は、宇宙観の歴史とは、常識を疑い、真実を解き明かすために戦い続けた人たちの歴史なのだなと感じました。めちゃめちゃ面白いです。
ギリシャにポリスが生まれる以前、宇宙は神が創造したものと信じられていました。そして各地域を治める王や貴族はその子孫であり、神から支配者としての地位を賜っているのだとされ、その権威の正当性が認められていました。しかし市民の中から海上貿易による利益で富をなすものが現れると、このような神話に頼る宇宙観に変化が訪れます。彼らは商船にのって他の地域へと向かいますが、いく先々でも各地の神話を耳にするのです。
しかし当然その内容はどれも異なり、どの神話も疑わしいことに気づくのです。そこから神話に頼らず、合理的に真実を探ろうとする「自然哲学」が生まれたのです。これが合理的な宇宙観の誕生です。大地は平面だと信じられていた時代に、地球説を世界で始めて唱えたピタゴラス。
非合理的な考えが神話によって正当化されている時代に、彼は数学こそが宇宙の真理や秩序を表すものだと信じました。
中世時代、ヨーロッパではキリスト教が普及し、地球が宇宙の中心であるという天動説が教会の教えによって信じられていました。そんな中地動説を信じたブルーノは逮捕され、教会の宗教裁判で自説を放棄するよう言われたもののそれを拒絶し、火あぶりの刑となりました。
世界で最も偉大な科学者アインシュタインに相手にされなくても、ルメートルは「宇宙は膨張している」という自説を曲げず、後に自らの正しさが証明されます。自説の正しさを証明するために、そして真実を解き明かすために、己を信じ、常識と戦い続ける。自説を曲げるくらいなら死を選ぶくらい、彼らは執着心を持っていたのです。
宇宙観の歴史は、周囲に流されてばかりでなく、時には自分が正しいと思ったことのために踏みとどまって戦う必要があることを教えてくれます。是非読んでみてください。
眠れなくなる宇宙のはなし | |
佐藤勝彦
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眠れなくなる宇宙のはなし/佐藤勝彦
眠れなくなる宇宙のはなし/佐藤勝彦 先日、「ホーキング、宇宙と人間を語る」を読ん