最近は人材育成プロセスの改革や、人材への積極的な投資を行なう企業が増えていると感じています。企業の競争力の維持/向上にむけて、優秀な人材の確保/育成は、重要なテーマと位置付けられているのでしょう。
実際に仕事で上記のようなご相談を受けたり、ご支援をしたりする場面が増えている中、最近読んだ本を今日はご紹介します。
1.人材マネジメントに対する経営の要求
企業は今、様々な変化に直面しています。
- 人口減少と少子高齢化により、次世代リーダー候補は今後不足する見通しである
- グローバル化により、世界の企業と競争が激化し、差別化が難しくなっている
- 市場の変化、ニーズの変化が早く、商品/サービスのライフサイクルが年単位から月単位へと、短くなっている
このような中で経営が求める人材像も高度化しており、具体的には
- 変革やイノベーションを現場で推進しながら、市場の変化や職場の課題にスピーディーに対応し、ビジネスの成果を出せるリーダー
- ビジネスプランをつくり、自分から動き、部下や周囲の人にリーダーシップを発揮できるリーダー
上記のニーズが特に高いと感じます。
よって、上記のようなハイポテンシャルな人材を早期発見/早期育成する取り組みを行い、将来必要となる適性な数と質のリーダー人材を確保することが、経営が人事に期待することだと言えます。
2.既存の仕組みの限界
しかし、上記のニーズに答えられている人事は、実は少数派なのではないかと思います。日々の業務で逼迫し、経営からのニーズと現状とのギャップを埋める余力がなく、従来からの人材育成制度を回すことで手一杯となっているのが実情ではないでしょうか?
人事部門に経営からのメッセージがあまり浸透していなく、経営方針と組織とを絡めた人事施策がないまま今までの経験で対応している企業も多いです。
3.求められる人事の業務改革
今のやり方をベースとして維持している限り、どれだけ改善を行っても、経営のニーズに答えることは根本的に不可能であると言えます。人事には今、業務改革が求められていると言えるでしょう。
『MBAの人材戦略』の著者であるデイビッド・ウルリッチによれば、人事には上記の4つの役割があるとされています。この中で、特に業務改革によって強化していく必要があるのが、「Strategic Partner」と「Change Agent」です。
企業の「Strategic Partner」として、人事は企業の経営ビジョン、戦略やバリューを踏まえ、自社における”優秀な人材”とは何かを定義し、そういった人材をいつまでどれくらい確保する必要があるのかを明確にしなければなりません。
また、企業の「Chage Agent」としては、上記人材の確保/育成に向けて、既存の仕組みの見直しが求められます。採用、配置、能力開発、パフォーマンスマネジメント(業績管理)など人材の育成と活用にかかわるすべてのプロセスを、企業のビジネス戦略を踏まえ、目的をもって体系的に行えるように再構築する必要があります。
上記のプロセスを推進する手段として、最近はタレントマネジメントシステムの導入実績が増えているようです。企業の変革において、今後注目度の高いテーマだと思います。
大転換する人材マネジメント―迫られる人事部の意識変革 | |
伊東 朋子
東洋経済リサーチセンター 2012-07 |