1.アマチュア営業は不要
法人営業を取り巻く環境が大きく変化しているのに対し、法人営業職のあり方が追いつけていないのではないでしょうか?競争が厳しくなったことで、今までのような担当者との人間関係に依存した取引は通用しなくなっています。顧客においては、他社との比較検討の実施や、投資対効果の算出がどこの企業でも義務付けられています。商品の提供側にとっても、同じような製品やサービスがあふれており、ますます差別化が難しくなっています。
そのような状況にもかかわらず、未だに自社商品を紹介するだけとか、顧客のご用聞きに終始している営業は、アマチュアであると言わざるを得ません。
2.業者ではなく、パートナーになる
本書では、営業は単なる「業者」ではなく、顧客と一緒に問題を解決する「パートナー」であるべきだと述べています。「パートナー」とは、顧客の求めているものが何なのかを考え、それを実現する上で障害になっているものを探し、どうすれば解決できるのかを能に汗を書きながら考えられる営業のことです。単に製品を紹介しに来たり、御用を聞きにくる営業は、顧客に取ってはいくらで代替えのきく業者の1つでしかありません。しかし問題を解決できる質の高いソリューションを創造でき、顧客のビジネスに貢献できる提案を持ってくる営業は、代替えのきかない独自の存在になり得ます。
顧客が本当に望んでいるものに応える努力をせず、先入観にとらわれて、「売れないものでも売るのが営業だ」というようなアマチュアレベルに甘んじているようでは、この先どんどん苦しくなる一方ではないかと思います。
3.情報収集は仮説を立てながら行う
問題解決につながる提案をするためには、まずは問題を知る必要があります。そして問題を知るには、顧客の現場について情報を集めることが欠かせません。しかし、いくら情報収集といっても、訪問するたびに闇雲に質問していては、お客様に悪い印象を与えてしまいます。そうならないよう、事前に仮説を立てるようにしましょう。
前回までにヒアリングした内容を訪問前に整理し、まとめることで、「ここ問題ではないか?」という仮説を見つけることが出来ます。その仮説に基づいて質問を組み立てれば情報収集の精度が増し、仮説の検証まで出来る場合もあります。私はよくパワポのスライド数枚に議論したい内容をまとめますが、訪問時にディスカッション資料として持って行くと大変スムーズに会話ができます。
4.ニーズやウォンツを発見する
顧客の求めるものに対してそのまま答えているだけでは、代替えのきく「業者」から脱却することは出来ません。製品やサービスの情報であれば、インターネットを探せばたくさん見つけられます。顧客が気づいていない問題点を発見し、顧客が気づいていない解決策を提案できなければ、営業がいる意味はないのです。顧客のニーズやウォンツが何なのかを常に考えるようにしましょう。
そのためには、顧客の業務や状況に常に関心を持ち、顧客の立場にたって考え続けることです。協調性ばかりを発揮して顧客の言いなりになるのではなく、顧客に共感できるようになりましょう。
5.応用力を身につける
営業をするうえで知識やノウハウはもちろん大切です。しかしそれだけでは、問題解決につながる提案をすることは出来ません。そもそも問題というのは顧客によってバラバラであり、持っている知識やノウハウをそのまま当てはめるだけでは解決しない場合のほうが多いのです。そういう状況下では、教えられたことをそのまま実行するだけでは不十分です。
自分の持つ知識やノウハウを組み合わせながら、新しい解決策を生み出す応用力が必要です。管理主義にはしるあまり、営業から創意工夫する意欲を奪ってしまわないように気をつけたいものです。
大前研一と考える 営業学 | |
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 ビジネススクール教授陣 大前 研一 斎藤 顕一 須藤 実和 川上 真史 後 正武 ビジネス・ブレークスルー大学学長 大前 研一
ダイヤモンド社 2011-06-17 |