ITを活用した業務の単なる自動化は一巡し、これだけを続けていても効果は薄く、差別化につながりにくくなっています。今後ITをビジネスの成長や事業競争力の向上に活かすには、IT活用を前提にして業務の在り方を抜本的に見直す業務プロセス改革や、自社のノウハウやコンテンツとITを組み合わせたビジネスモデル改革を成功させることが必要になると考えます。
今回読んだ『会社のITはエンジニアに任せるな!』は、上記のうち業務プロセス改革をテーマにしています。「IT部門やベンダーへの丸投げでは業務改革は成功できない」という主張の元、経営層や業務部門の方向けに、これを成功させるための心構え、IT部門(またはIT)に対する関わり方について、専門用語を使わずに分かりやすく解説されています。
ITはビジネスの成長に引き続き有効である一方、ITのスピードが経営や事業のスピードを決める時代になっています。経営層の方に是非読んでもらいたいですし、IT部門に所属する人であれば、本書を経営層や業務部門の方に渡すと良いと思います。
感想
書いてあることはその通りだと感じます。一方で、これのビジネスモデル改革版もあれば読みたいです。
企業内でITを活用して新ビジネスを立ち上げる際に、IT部門を通さずに業務部門側で直接ITを調達・運用するケースが増えています。これは、IT部門を通した場合に比べてスピーディーかつ柔軟な対応を期待できる一方、IT部門が本来持つ管理ノウハウを活用できないため、業務部門側でうまくコントロールできず、システムが個別最適化して品質やコストが安定しないというデメリットもあります。
新ビジネスの立ち上げ期で市場が成長傾向にあるうちはスピード優先で個別最適でも良いのですが、ビジネスの規模が成長し、また市場の成熟度が高まるにつれ、競争に勝つために内部の効率性にも目を向ける必要性が出てきます。
この領域におけるITに対する経営層のかかわり方、業務部門とIT部門の役割分担、適切な管理モデルを導き出し、少子高齢化をものともしない日本発の高生産性ビジネスの実現に貢献することが、最近の私の関心ごとです。
会社のITはエンジニアに任せるな! ―――成功率95.6%のコンサルタントがIT嫌いの社長に教えていること | |
白川 克
ダイヤモンド社 2015-12-04 |
本書はケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ様よりいただきました。ありがとうございました。
実は著者の白川様の前の書籍である『反常識の業務改革ドキュメント』も昨年に読みました。古河電工の人事総務部門における業務改革プロジェクトを成功に導くまでの過程がありありと書かれています。特に、生産性の高い会議の進め方や、抵抗勢力に対する準備の仕方などが、勉強になりました。泥臭い部分まで書かれており、実践で使える手法を学びたい方にはこちらが非常にオススメです。
反常識の業務改革ドキュメント プロジェクトファシリテーション 〈増補新装版〉 | |
関 尚弘 白川克
日本経済新聞出版社 2013-10-22 |