代表的日本人 (岩波文庫) | |
鈴木 範久
岩波書店 1995-07 おすすめ平均 |
内村鑑三さんの『代表的日本人』を読みました。
本書は、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人といった日本の偉人たちを紹介した一冊です。
本書を読んで、私は彼らに共通点を見つけました。
それは、彼らが0から1を生み出した人々であったということです。
たしかに西郷の同志には、多くの点で西郷にまさる人物がいました。
それにもかかわらず、西郷なくして革命が可能であったかとなると疑問であります。木戸や三条を欠いたとしても、革命は、それほど上首尾ではないにせよ、たぶん実現をみたでありましょう。必要だったのは、すべてを始動させる原動力であり、運動を作り出し、「天」の全能の法にもとづき運動の方向を定める精神でありました。
一度動き始め、進路さえきまれば、あとは比較的簡単な仕事であります。
よく、世の中には全く新しいアイディアというものはなく、それらは既存のアイディア同士の新しい組み合わせに過ぎないのだということを言います。
確かにアイディアに関してはそうなのかもしれません。
しかし革命にしろ、学校を創るにしろ、問題解決に向けて行動するにしろ、思想を広めるにしろ、何か行動を起こす際には必ず最初に事を起こす人(0から1を生み出す人)と、その後に参加して一緒に事を進める人(1を100に育てる人)の2者が存在するのではないかと思います。
一度動き出したものに後から参加するのは、最初に事を起こすのに比べたらそれほど難しいことではありません。
既に運動が起こっているならば、後は賛同して一員になってしまえばいいのです。
それに比べ、最初に事を起こす人は大変です。
皆が見てみぬふりをしている中で、不正を告発するのには勇気が要ります。
起業しようと思ったならば、失敗するというリスクを背負わなければなりません。
立ち上がっても、もしかしたら誰もついてきてくれないかもしれません。
権力に逆らえば、身に危険が及ぶかもしれません。
どんな壁でもぶち壊すような原動力がなければ、0から1は生まれないのです。
0から1を生み出す人は、必ずしも生きているうちにそれを100まで育てることはできないかもしれません。
しかし1という種をまいておけば、後を継ぐ人々がそれを育ててくれるかもしれません。
私もそういう種を生きているうちにたくさんまいておきたいと思いました。
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鈴木 範久
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