1.革命家スティーブ・ジョブズ
今スティーブ・ジョブズの伝記を読んでいる途中なのですが、面白いと思ったポイントがあります。それは、会社の状態によって、ジョブズのようなリーダーを必要とする場合と、そうでない場合があるのではないかと言うことです。
アップル社の立ち上げの時に、傲慢なくらい我が道を行く”革命家”ジョブズがいなければ、今の成功はなかったのでしょう。しかし一度会社が軌道に乗り、組織が巨大化すると、「いかに新しい行動を起こし変化するか」ではなく、「いかに今やっていることを上手く回していくか」という視点に会社の考えは移っていきます。そうなったときに、ジョブズのように言うことを聞かない、面倒くさい人は邪魔だったのでしょう。株式公開とマッキントッシュで成功を収めた後、彼は自ら創業した会社を追い出されてしまいます。
しかし10年後アップルの業績が低迷し、存続の危機になると、組織は再び変革を求めるようになります。その時にジョブズは再びアップルに必要とされ、見事に会社を改革し、今の成功に至るわけです。
2.『マネーボール』は野球に革命を起こした
革命を起こしたという点では、先日見た映画『マネーボール』も深く共感させられました。スカウトの長年の経験則と直感で選手を獲得するのが当たり前だった時代に、「年間予算でヤンキーズに大きく劣る我々のような小さなクラブが、ヤンキーズと同じ考えでやっていたら勝てないんだ!」と唱えた、アスレチックスのGMビリー・ビーンの革命がテーマです。
彼は経験則や直感を否定し、統計データをもとに選手を獲得し、チームを構築し始めます。しかし周囲の反発は大変なもので、「そんなことをしていたら絶対に勝てない!」「野球を全く分かっていない!」「我々の経験則がいかに重要かを理解していない!」「野球への冒涜だ!」と、監督やコーチ、メディアからの批判にずっと悩まされることになります。しばらくは結果が出ず、彼は様々な困難にぶつかりますが、それでも「野球を変えるんだ!」という自分の想いを貫いた結果、一定の成果を治めることに成功します。
シーズン終了後には当時史上最高額でレッドソックスのGM職をオファーされるのですが、その時のレッドソックスのオーナーのセリフに、この映画の伝えたかったことが凝縮されていると感じました。
「新しいアイデアが出たときは、必ず批判するものが現れる。そんなやり方ではうまくいかない!野球を理解していない!野球への冒涜だ!・・・。彼らは様々なことを言ってくるだろうが、しかしこういう人に負けてはいけない。彼らは結局のところ既得権益者であり、ルールが変わることで自分達の仕事を失うことを恐れているだけなのだ。野球への冒涜などでは決してない。そんなことを言っているチームは、来年以降、我々が優勝する姿をテレビで見続けることになるだろう。」
3.革命家であろう!
サッカーの世界には「勝っているチームはいじるな」という定説があります。確かに現状でうまくいっているのであれば、わざわざリスクを犯してまで変革をする必要はないのかもしれません。しかし、今のやり方では勝てないこと、いずれダメになることが分かっているのであれば、批判や否定の声に負けず、自分が正しいと信じたことを成すべきなのです。
結局のところ批判する人達は、組織が変わることで自分達の仕事がなくなることを恐れているだけなのかもしれないのですから。どうすれば周囲からの反応がいいかだけを気にするのではなく、今をより良くするために必要なことを成すべきなのです。その結果として、世の中が少し良くなればうれしい、そういう生き方をしたいと思いました。
スティーブ・ジョブズ I | |
ウォルター・アイザックソン 井口 耕二
講談社 2011-10-25 |