上司へのレポート提出や、顧客向けの提案書、日々のメールのやり取りなど、ビジネスでは文書を書く機会がたくさんあります。「言いたいことが伝わらず、機会を逃してしまった…」という経験が、皆さんにもあるのではないでしょうか?
実は、伝わるビジネス文書を書けるかどうかは、文書を書く前の準備段階で決まるといっても過言ではありません。今日は、ビジネス文書を書き始める前にやっておくべき2つのことについて、書きたいと思います。
1.OPQを分析する
ビジネス文書の読み手は、自分の悩みに対する答えを求めて文書を読んでいます。よって、読み手の疑問に対する答えこそが、ビジネス文書で伝えるべき内容なのです。いきなり文書を書き始めず、まずは読み手の疑問を理解し確認するために、「OPQ」分析をします。
O:Objective(望ましい状況)
読み手が考えている達成すべき目標や改善後の姿を指す
例)設定した売上目標を達成したい
P:Problem(問題、すなわち現状とObjectiveとのギャップ)
現状と望ましい状況とのギャップであり、解決すべき問題を指す
例)上昇していた売上にブレーキがかかり、目標達成が危ぶまれている
Q:Question(読み手の疑問)
問題に直面した読み手が、その解決に向けて抱くだろう疑問を指す
例)売上目標を達成するにはどうすればよいか?
最後の「Q」に対する答えこそが、文書で伝えるべきメッセージとなります。
2.論理構造ピラミッドを作る
OPQ分析をしたら、Qに答えるメッセージを構築します。ここでいきなり書き始めてしまうと、ダラダラと長い文書になってしまいがちです。
ビジネス文書のコツは、言いたいことが何で、全体としてどういう構造になっているのかが一目でわかるようにすることです。そこで最近私が使っているのが、論理構造のピラミッドです。
上記の図では、「帳票基盤の構築が必要である」という主張と、その主張を支える3つの根拠を書いています。伝えたいことと、その根拠をピラミッドを使って整理することで、「この文書は何が言いたいのか?」「主張の根拠はあるのか?」という読み手の疑問に答えられる、分かりやすい文書が書けるようになります。
私はこの「1つの主張と3つの根拠」という論理構造ピラミッドを、提案書の最初のページに記載するようにしていますが、「何を言いたいのかが分かりやすくて良い」とお客様から好評いただいてます。
3.論理構造ピラミッドを作るときのコツ
最後に、論理構造ピラミッドを作るときのコツをいくつかご紹介します。
1.主張を見出しにしない
論理構造の主張の部分を見出しのように書いてしまうと、とたんに中身のないメッセージとなってしまいます。例えば上記の図の例で、主張の部分を「帳票基盤の構築について」にしてしまうと、基盤を構築するべきなのか、それともしないべきなのか、つまり何が言いたいのかがよく分からなくなってしまいます。主張は、読み手にメッセージの中身が伝わるものにしてください。
2.「あいまい言葉」を使わない
メッセージの中に、「見直し」「再構築」「問題」「適切な」といった、「あいまい言葉」を使ってはいけません。以下の例から分かるように、あいまい言葉は具体性に欠け、主張をぼかしてしまいます。
悪い例:帳票システムの見直しが必要である
帳票システムの見直しと言われても、具体的に何をすればいいのかが読み手には伝わりません。「帳票システムを共通基盤化するべきである」とか、「帳票ツールをA社製品に入れ替えるべきである」という具合に、主張を具体的に伝えてください。
3.根拠は3つにする
主張を支える根拠が1つしかないと、説得力に欠けてしまいます。かといって、いくつもいくつも根拠を並べ立ててしまうと、読み手が覚えきれなくなってしまいます。根拠は3つ、多くても5つまでにしてください。
【参考文献】
入門 考える技術・書く技術 | |
山崎 康司
ダイヤモンド社 2011-04-08 |