フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略 | |
クリス・アンダーソン 小林弘人
日本放送出版協会 2009-11-21 おすすめ平均 |
デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる
今更の紹介ですが、クリス・アンダーソン氏の『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』は必ず読んでおくべきです。なぜならば、今後どの業界にいようとおそらく「無料」との競争は避けては通れないからです。実際にIT業界ではその流れが顕著で、本書に登場するフリー経済の原則は知らないでは済まされません。
例えばアーティストの曲がインターネット上で無料で交換されてしまうことに対し、未だにレコード会社は著作権の侵害だとして非難する立場をとっています。しかしアーティストにとっては何もCDの売上だけが収入源ではありません。無料で楽曲を入手したユーザーたちは、もしそれを気に入れば、コンサートにきたりTシャツなどのグッズを買ってくれる有料顧客になるかもしれません(ちなみにローリングストーンズの収入の9割はコンサートツアーによるものなのだそうです)。
逆の言い方をすれば、無料で音楽を配布することは、いつか有料顧客になってくれるかもしれない多くのユーザーたちに自分の曲を届ける手段になり得るのです。コンテンツに対してお金を払ってもらうことはもちろん大変なのですが、お金を払ってくれる見込み客を大勢集めることのほうが実はよっぽど難しいのです。多くの注目を集めるために企業が多額のマーケティング費用をかけていることを見れば、一目瞭然ですね。
これを利用するとどうなるでしょうか?例えばまだかけだしで資金に余裕のないミュージシャンにとっては、無料で楽曲を配布することはお金をかけずに注目や評判を集めるうってつけの方法になりえます。ソフトウェアベンダーであれば、あるパッケージソフトを無料で配布することで多くのユーザーを集め、別の有料パッケージソフトを提案するための窓口を増やすことが出来ます。特にITの世界ではクラウドやオープンソースの台頭が顕著なわけですから、コモディティ化している製品は間違いなく無料(もしくは、ライセンスは無料でサポートは有料)になるでしょう。
フリーは新しい顧客を獲得するドアを開けてくれる。無料だからと言って誰からもお金をとれないわけではないのだ。
つまりフリーの本質は何かが安くなることではなく、何かを無料化することで別のものの価値を広げることにあるのです。これを理解しておかないと、今後の新しいビジネスモデルをまるで理解できなくなってしまいます。
あるもののコストがゼロに向かっているならば、フリーは可能性ではなく、いつそうなるかという時間の問題だ。それなら真っ先に無料にすればいい。それは注目を集めるし、注目をお金に変える方法は常に存在する。
検索ワードにマッチした広告を載せることで、Googleは大成功をおさめています。雑誌はそのコンテンツをWeb会員に無料で解放することで、そのアクセス情報からトレンドをつかみ、それを情報として売ることが出来ます。ではテレビは?新聞は?是非本書を読んで、勉強してみてください。
フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略 | |
クリス・アンダーソン 小林弘人
日本放送出版協会 2009-11-21 おすすめ平均 |
2 Comments
この本、書店で平積みされているのを見たのですが、隣に積まれていたべっちーのFree経済本の方についつい手が伸びて(笑)、そっちを買ってしまいました。
べっちーの本は独特の変化球的な面白さがありますが、今回のブログで紹介されているクリス・アンダーソン氏の『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』は、必ずおさえておくべき「王道」という気がしますね。
早速こっちの本も買って、ど真ん中の直球と変化球、両方読み比べて見ます(笑)!
とっしーさん
なるほど、ついつい、とまっちの方を選んでしまったのですね。
確かにすごい変化球を投げてきそう・・・(笑)