あなたがいなくても勝手に稼ぐチームの作り方 (アスカビジネス) | |
岡田 充弘
明日香出版社 2011-01-18 |
【お題】
自分抜きでも仕事を回すにはどうすればいいか?
ポイント1.一歩下がる
リーダーが現場の仕事に入り込みすぎると、その仕事に慣れてしまいます。すると今のやり方を疑わなくなり、課題を見失ってしまいがちです。リーダーは一歩下がるくらいがちょうどいいのです。チーム全体を俯瞰し、客観的な視点でチームの運営や課題に対して対応策を考えましょう。
ポイント2.オフィスからいなくなる
リーダーであるあなたがオフィスからいなくなれば、メンバーは否が応でも自分で問題解決しないといけないことが増えてきます。結果として、メンバーは自立せざるをえなくなるのです。リーダーがすぐに答えを与えてしまうと、メンバーは自分で考え、行動し、失敗し、どうすればうまくいくのかを考えるという学習機会を失うことになります。答えを与えずにあえて見守ることで、メンバーの成長を促しましょう。
ポイント3.ポジショニングをする
自立したメンバーほど、「役割」と「権限」を意識します。この定義が曖昧なほど、メンバーはどう動いていいのかが分からなくなり、その都度リーダーに確認を取らないと動けないことになります。メンバーが何を期待されていて、どこまでが自分の裁量で許されるのかをつかめるよう、「役割」と「権限」を明確にしておきましょう。
ポイント4.役割を変える
1人の人が同じ役割でずっと仕事をしていると、自然とそのやり方が固定化されてしまいます。本来誰にでもできる仕事であるはずが、その人にしかできない仕事になってしまい、多くのムダを内包したまま聖域化してしまいます。これでは改善活動が進みませんし、その人がいなくなると仕事が回らなくなってしまいます。メンバー間で可能なかぎりスキルを共有することで、「自分にしかできない仕事」をなるべくつくらないようにしましょう。
ポイント5.標準化する
業務のやり方が人によってバラバラであったり、その時々で違ったりすると、業務上のいたるところで迷いが生じてきます。この「迷いの時間」が積み重なると、「実行する時間」よりも多くなっている場合が多く、チームの生産性に大きな打撃を与えてしまいます。「不健全な迷い」をなくすために、仕組みやルールを整備し、仕事の標準化を進めましょう。
ポイント6.プロとして扱う
リーダーが寄せる期待に応じて、メンバーはそれに応えようとするものです。あなたがメンバーをノンプロとして扱えば本当にノンプロになってしまいますし、メンバーの成長を願ってプロとして扱えばやがて本当にプロになります。メンバーを自立したプロとして扱いましょう。
適切な質問をなげかけられることで、メンバーは頭の中にある混沌とした考えを引き出し、整理することができ、自らの気づきで学習するものです。答えを出さずに「問いかけ」によってメンバーの自立と成長を促すことは、確かに時間と労力を必要とします。しかし、やがて自立したメンバーでチームが構成されるようになれば、答えがないと動けないメンバーで構成されているチームよりも、きわめて強い変化対応力を示すことになるはずです。メンバーが自立するまでは、辛抱強く待ちましょう。
【考察】
少しサッカーのネタになりますが、最近のバルセロナの華麗なパスサッカーや、そのなかで眩い輝きを放つメッシやシャビといったスター選手達は、現代サッカーに大きな風潮を生み出そうとしています。「戦術で選手を縛らず、自由にプレーさせたほうが、創造力のある選手たちは力を発揮できるものだ」というのが今までの考え方でしたが、華麗なパスサッカーを展開するバルセロナほど選手を戦術で縛っているチームはないのです。
勘違いする人もいますが、バルセロナはメッシやシャビ、イニエスタという優れた選手たちを数多くようするからあのような連動性のあるパスサッカーができるわけではないのです。下部組織からトップチームまで一貫したチームコンセプトで選手を育て、高い戦術理解力を備えた選手たちが同じプレービジョンを持ち、自分たちの役割と権限を完璧に理解しているからこそ、彼らは強いのです。
その証拠に、ペドロやブスケッツといった近年のバルセロナ下部組織出身の選手たちが容易にトップチームに溶け込めているのに対し、バルセロナであれだけ優れたプレーを見せるメッシもアルゼンチン代表では大したインパクトを残せていません。現在のバルセロナが教えてくれるのは、戦術が浸透し、メンバーが自らの役割と権限を完璧に理解することで共通のプレービジョンを持てる組織ほど強いチームはないということです。
バルセロナの成功は「アンチフットボールに対するアタッキングフットボールの勝利」などではなく、戦術の勝利です。「自分がいなければチームが回らない」というのは、チーム内の決め事が足りていない証拠。この機会に是非見直してみてくださいね。
あなたがいなくても勝手に稼ぐチームの作り方 (アスカビジネス) | |
岡田 充弘
明日香出版社 2011-01-18 |