今すぐできる「戦略思考」の教科書 ビジネス本を何冊読んでも身につかない人のための | |
筏井 哲治
講談社 2010-11-19 |
私のような営業職はもちろん、多くの知的労働者にとっては、考える力がとても大切です。しかし考える力を身につけろと言われても、大体の人は「そもそも考える力ってなんだ?」「どうやって身につければいいんだ?」となるのがオチです。そういう人はまず、考える力とは「分解する力である」と理解するのがいいと思います。
MECEを使いこなす
考える力の弱い人に話を聞くと、「どこがわからないのかが分からない」「頭がごちゃごちゃしてしまう」とよく言われます。それは、頭がごちゃごちゃしたまま考えるからそうなるのです。人は物事を考えるとき、その範囲が広いとすぐに頭がこんがらがってしまいます。
にもかかわらず複雑なことを複雑なまま考えるから、ワケが分からなくなってしまいます。
では考える力のある人はどうしているかというと、考える範囲を小さく分解しているのです。例えば営業職であれば、考えない人は漠然と「どうしたらもっと売上があがるんだろうか?」と悩んでしまいますが、受注にいたるまでには様々な要素が複雑に絡み合っているので、勘や思いつきで対策を考えるしかありません。
こういう時に考える人はどうするかというと、受注にいたるまでにどのようなプロセスがあり、各プロセスでどのような要素が求められるのかを細かく分類していきます。そうすると、そのなかのどこの部分に課題があるのか、成果を制限してしまっているのはどこなのかを考えやすくなり、効果的な解決策に結びつきやすいのです。
お客様に提案するときも一緒です。お客様は様々な課題を抱えていますが、根本原因を特定して効果的な提案をするためには、課題の背景にどのような組織構造があるか、仕組みがあるか、プロセスがあるかを、各要素に分解して個別に検討する必要があります。「人材育成に悩んでいるなら、教育プログラムを提案します!」という脊髄反射的な営業ではなく、「なぜ人材が育たないのか?それによってどんな問題が起こっているのか?それは本当に人材が育たないことが問題なのか?他の原因があり、より効果的な解決策があるのではないか?」ということを考えられる営業にバリューがあるのです。
そのためには、複雑な物事を考えられる範囲にまで細かく分解する力を身につけることです。分解の基本はMECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)、つまりモレなくダブりなく分類することです。まずは大分類を考え、だんだん小さく分類していくクセをつければ、モレやダブリがなくなり、クリアな頭で物事を考えられるようになるでしょう。
今すぐできる「戦略思考」の教科書 ビジネス本を何冊読んでも身につかない人のための | |
筏井 哲治
講談社 2010-11-19 |