イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」 | |
安宅和人
英治出版 2010-11-24 |
【お題】
問題解決のバリュー(価値)を高めるにはどうすればいいか?
ポイント1.悩まない
悩むというのは、答えが出ない前提のもとに考えるふりをすること。対して考えるというのは、答えが出る前提のもとに、建設的に考えを組み立てることです。家族や恋人の問題のように、向かい合い続けること自体に価値があるというようなものをのぞけば、悩むことには一切意味がありません。悩むことと考えることは違うということを、理解しましょう。
ポイント2.イシュー度を高める
多くの人は、問題解決で大事なのは「解の質」を高めることだと考えています。しかし、ほんとうに大事なのはそもそも何を問題と捉えるかなのです。解決してもバリューのない問題や、そもそも間違った問題設定をしている問題に対して、いくら解の質を高めても仕方がありません。「自分の置かれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」=「イシュー度」こそが重要なのです。
ポイント3.犬の道に逃げない
4象限マトリクスで表せば、イシュー度が高く、かつ解の質が高い領域の仕事が、「バリューのある仕事」です。ここで気をつけたいのが、一心不乱に大量の仕事をすることでこの領域に行こうとしないことです。イシュー度の低い問題にいくらたくさん取り組んで解を出したところで、最終的なバリューは上がりません。
うさぎ跳びをいくら繰り返してもイチローにはなれないのです。「正しい問題」に集中した「正しい訓練」だけが成長につながります。「努力と根性」に逃げず、まずは徹底してビジネスの対象を意味のあること=「イシュー度の高い問題」に絞りましょう。
ポイント4.チーム内で意思統一をする
「やっているうちに見えてくる」「やらなくてもわかっている」と、イシューの見極めを省略してとりあえず動き出してしまいがちですが、これこそムダが多く生産性の低いアプローチです。「これは何に答えを出すためのものなのか」というイシューを明確にしてから問題に取り組まなければ、必ず混乱が発生し、目的意識がブレてムダが生まれます。あらかじめチーム内でイシューに対して意志を統一し、立ち返れる場所をつくっておきましょう。
ポイント5.なんちゃってイシューに惑わされない
低迷しているブランドに対し、「今のブランドで戦い続けるべきか」「それとも新ブランドにリニューアルすべきか」をいきなり検討してはいけません。まずブランドの低迷要因をはっきりさせなければ、ブランドの方向性の修正がイシューかどうかがわからないのです。このように、一見イシューに見えるものの、実際にはそうでない「なんちゃってイシュー」がたくさんあります。気になる問題が100あったとしても、今本当に答えを出すべき問題はそのなかの2〜3程度です。イシューらしいものが見えたら、本当に今それに答えを出さなくてはならないのかを、立ち返って考えてみましょう。
ポイント6.現場に行く
イシューを特定するためには、情報が欠かせません。ここで頭のいい人が陥ってしまいがちなのが、自分の頭だけで考え、一見効率が良さそうな読み物などの二次情報だけで判断することです。これは問題解決において命取りです。
現場で何が起こっているのかを実際に見て肌で感じなければ、理解出来ないことは多いのです。「色眼鏡をつけて見た情報」で仮説を立てず、現場に行きましょう。
【考察】
今までに読んできた問題解決の本は、解決のための手法に焦点を当てたものがほとんどでした。その点、そもそも何を問題と捉えるかをわかっていなければ、アウトプットのバリューは上がらないと指摘した本書は新鮮でした。アウトプットの価値を決めるのは、いかに短い時間で大量の仕事をこなすかではなく、いかに短い時間で価値の高い仕事をするかです。問題解決力を磨きたい人はもちろん、アウトプット力を改善したい人も是非読んでみてください。非常にオススメです。
イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」 | |
安宅和人
英治出版 2010-11-24 |
One comment
圧倒的じゃないか、と思われる人になるために – 書評 – イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
「知識社会を生き抜く」というような言葉が、いつしか自己啓発などの合言葉のようになっているように感じます。
僕自身、そのために知的生産性を高める、ということを一つのテーマにして読書をしてきている面…