私の仕事術 (講談社+α文庫) | |
松本 大
講談社 2006-08-19 |
【お題】
マネックスCEOの仕事術とは?
ポイント1.コミュニケーションとは結果を出すこと
コミュニケーションとカンバセーション(会話)は、全く異なります。コミュニケートというのは、会話をすることではなく、目的を持って結果を出すことなのです。ちゃんと目的意識を持ち、お互いに真意をきちんと伝えあるいは受け取って、そのうえで何らかの結論を出さなければなりません。
クリントン元大統領が1対1で話すときは、相手の目をじっと見つめ、「あなただけの話を聞こう」「この宇宙の中で、あなたが最も大切な人なのだ」という雰囲気で語りかけてくるそうです。ただ漠然と話すより、少しでも相手の心をつかもう、わかってもらおう、という強い意志を持って相手に接しましょう。
愚痴を行っているだけでは、前に進まないのですから。
ポイント2.時間感覚を強く持つ
個人向け国債を買っている人からすれば、国債の利子が金利水準の変動によって増えることはうれしいことかもしれません。しかしそれはあくまで点しか見ていない状態であって、もっと長い時間軸で見れば、支払う利子が増えるだけ日本の負債が増え、国民に対して提供する公的サービスも悪化し、回りまわって自分に返ってくるのです。
仕事でも同じことが言えます。「とにかく目先の業績が厳しいから、決して本意ではないが、その仕事を引き受けてしまおう。」もっと将来を見据えて、その仕事を引き受けることが会社や自分自身の将来にとってよいことなのかどうかを、現在価値にしたうえで判断しないと結果として損をしてしまいますし、信用を失いことにもなりかねません。
ポイント3.会議は30分まで
30分以上の会議はあまり意味がありません。それ以上続けても、どうしてもだらけてしまいます。会議をしていると、わかっていることを繰り返して言ったり、「誰々と一緒です」と一言いえば済むような場面でも「誰々と一緒なんですけど、ああだこうだ」と、延々と話を続けたりすることがままあります。これは時間の無駄です。
特に時間間隔の強い人は自分の時間を大切にしているので、こういう相手の時間を尊重できない人ははっきりいって嫌われます。会議は30分と決めましょう。
ポイント4.情報に対する好奇心を持つ
特定の情報源のみにしか接していないと、自分のものの見方、考え方に、どうしても偏りが生じてしまいます。本当はそれほど重要でないことが重要そうに見えたり、その逆も考えられます。こういったことを避けるためにも、さまざまな情報源と接するようにし、情報のパースペクティブを持ちましょう。また、「この人凄いな」「実力があるな」という人はまず例外なく、情報に対する感度が高いものです。情報に対する好奇心を持つようにしましょう。
ポイント5.アイデアを実行する
天才かどうかは別にしても、ビジネス価値とは、アイデアの実現に向けて汗をかくことのほうに重きが置かれます。この「汗をかくこと」をエクスキューズションといいます。ひらめいたアイデアはちゃんと実現させましょう。アイデアをひらめくことだけでは、何も意味がありません。
ポイント6.バリュー・パー・タイムを意識する
仕事をする上では、仕事のプライオリティを考えましょう。プライオリティというと「何を先に始めるか」という手順の問題と勘違いされがちですが、本当のプライオリティとは「どれを取り、どれを捨てるか」という意味なのです。何でもかんでも全てをやっていては、新しいことを取り入れる時間がありません。
また、そういう人は忙しくなると仕事全体が相似形的に詰められていくため、結果として重要な部分も小さくなってしまいます。より価値の低い仕事をストップさせ、時間の無駄を排除し、新しい仕事を取りに行くための余裕を確保しなければ、仕事の価値は高められません。単位時間あたり、単位労働あたりの価値を考えましょう。
【考察】
日本には「仕事の道徳」のようなものがあって、「どんな仕事にも意味がある」「仕事はプライベートよりも優先されるものである」「たくさん仕事をしている人が偉い人」みたいな風潮がどうもあるなと感じています。しかしそういう教育をしていると、社員は仕事を「やらない」という選択ができなくなります。
「仕事は尊いものである」と教えられているので、「仕事をやらないなんて悪いことだ」と考えてしまうのです。しかし本来仕事とは、結果をいかに最大化するかを考えながら行うべきものです。まず「結果」として評価されるものがなんなのかという議論があるかもしれませんが、その上で限られた時間の中でそれを最大化するには、当然ムダな仕事は極力排除して、効果の出る仕事にその分時間をかけたほうが基本的には良いのです。
もちろんやってみないとムダかどうかが分からないものもあるのですが、ある程度やってみたらどこかで効果を測定して、もし結果がおもわしくなければ辞めないといけません。PDCAのサイクルで言うと、日本企業の典型的なパターンはPlan⇒Doまで回し、そのままDoで突っ走る。Checkをしないから今Doしていることが効果的なのかどうかもわからず、そのままDoし続けているイメージです。そういう惰性で仕事をしていながら「仕事は尊い物」なんて道徳を振りかざしても、説得力はないのです。
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松本 大
講談社 2006-08-19 |