プロジェクトを変える12の知恵 | |
影山 明
日経BP社 2011-06-13 |
今日ご紹介するのは、支援したプロジェクトの95%以上を成功に導いているという、ケンブリッジ式プロジェクトファシリテーションの一冊です。ちょうど来週から会社の新人たちがそれぞれの部署に配属される予定で、私は営業部の研修プロジェクトを任されています。何か良い知恵はないかと読んだのですが、とにかく刺さる刺さる。私が読んでいて是非取り入れたいと感じたポイントを紹介します。
1.ゴールを明確にする
ゴールを明確に決めない限り、成功したかどうか判断できない。つまり成功はない
とても基本的なことのように思えますが、実際の現場を見渡してみるとゴールをきちんと決めていないプロジェクトが本当に多い。こういうプロジェクトでは大概、メンバーの意見がなかなか一致しません。なぜなら、目指すべきゴールを共有しないままに、手段について意思決定をしてしまうからです。
サッカーで自陣のゴールがどちらか分からないままプレーするのと一緒で、ゴールを設定しないままプロジェクトを進めても必ずメンバーのベクトルが合わなくなります。プロジェクト・ゴールを正式に決めるまでは、立ち上げメンバーの間でもプロジェクトに対して微妙にずれた期待値を持っているもの。まずはゴールを明確にし、メンバーの思いを一つにしましょう。
2.CSFを決める
ゴールと同様に、CSFについても決めておきましょう。CSFとはCritical Success Factorsの略で、「ある目標の達成のために不可欠なこと」を意味します。CSFはゴールとセットで決めることで、プロジェクトを成功に導く道しるべとなります。例えば新人研修のゴールが「新人が営業として自律すること」であれば、「会社案内は出来ないと自律しているとは言えないよね」「お客様の課題はヒアリング出来ないと」「導入事例について紹介できないと」という具合でしょうか。
3.ノーミング・セッションを行う
ノーミング・セッションとは、短期間でチーム・ビルディングを行い、チームの一体感を高めるための仕掛けです。メンバーによってプロジェクトに対するモチベーションや目的意識は最初はバラバラのはずで、そこからだんだん機能するチームへと成長していくことはプロジェクトを成功させる上で不可欠です。プロジェクトチームが発足したばかりの段階では、まだ互いのことやプロジェクトの目標も見えておらず、遠慮がちな段階です。
そこから理解が進んでくると、考え方の違いや、意見の衝突が表に出てきます。更に話し合いを続け、お互いが納得出来る方向性が見え始めると、チームワークのための価値観が統一でき、役割分担がしっくりし始めます。そしてチームとして最高のパフォーマンスを発揮できる状態へと進んでいくのです。具体的なノーミング・セッションの方法は、本書を読んでみてください。
4.ルールを決める
プロジェクトを円滑にすすめるためには、ルールが必要です。ルールによって、メンバーの好ましい振る舞いを促進し、好ましくない振る舞いを防ぐのです。例えばミーティングには5分前に集まるとか、ミーティング中は人の話をさえぎらないとか、簡潔に話すとか、ひそひそ話はしないとか。必要なルールはあらかじめ定め、壁などに貼っておきましょう。
5.意思決定のプロセスをファシリテートする
プロジェクトの意思決定プロセスをリードすることも、ファシリテーターの重要な役割です。なぜならば、どのようなプロセスで意思決定をしたかは、メンバーの行動に大きな影響を及ぼすからです。
自分が納得していないプロセスで決まった結論というものは、根が張っていないから弱い。収穫までの長い間に起きる様々な嵐に耐えられません。その嵐に耐え得るのは、「正しいプロセスで決めたんだ」という確信です。つまり意思決定のプロセスに対する納得なのです。
6.課題を管理する
プロジェクトを進めていると、様々な問題が出てくるものです。問題に対しては、「その問題により、何が困るのか」と、「その問題は、何が原因なのか?」という二つの視点で対処しましょう。まず影響をきちんと検討することで、それが優先的に解決すべき問題なのか、しばらく放置しておいてもよいのかが判断できます。一方で原因をきちんと掘り下げることで、適切な対策(課題)が自ずと見えてきます。対して優先度の高くない問題に振り回されたり、根本原因を定めないままとんちんかんな対策を施したりして、時間を無駄にしないようにしましょう。
7.チェックポイントを設ける
プロジェクトにも振り返りが必要です。定期的なチェックポイントで、プロジェクトの進め方や進捗について、検討が必要です。ミーティングのゴールは達成できているか、議論のプロセスは合理的だったか、参加意欲が高かったか等を確認しましょう。そうすることでプロジェクトの生産性が上がり、メンバーのプロジェクトへの参加意欲も高まります。進捗を確認することチームメンバーの負荷をマネージするとともに、定期的なチェックでチームにリズムと一体感を生むのです。
本書はケンブリッジ・ビジネス・パートナーズ株式会社の山内奈緒子様よりいただきました、ありがとうございました。
プロジェクトを変える12の知恵 | |
影山 明
日経BP社 2011-06-13 |