野村進さんの著書、「調べる技術・書く技術」を読んだ。
本書はノンフィクション・ライターである著者が、自身の知的生産術について解説したものだ。
中身は8つの章から構成されており、
●テーマを決める
●資料を集める
●人に会う
●話を聞く
●原稿を書く
●人物を書く
●事件を書く
●体験を書く
と、最初のテーマ決めから原稿完成までを丁寧に網羅している。
本書には著者がノンフィクションについて、描いた人物の像が読者の脳裏に浮かぶかどうかが成否を分けると述べている記述があるが、本書はまさにノンフィクション・ライターの仕事風景がイメージできるようになっている。
ライターを目指す人は、一読しておくと自分の将来がイメージしやすくなると思う。
本書で私が興味を持ったのは、テーマ決定のチェックポイントの2つ目に著者があげている、「②未来への方向性を指し示せるか」の部分だ。
ノンフィクションというくらいだから事実が求められているのは確かだ。
しかし、単に事実だけを並べて「論」に走るのではなく、あくまでも事実の集積を通して「書き手の主張」を伝えなければならないのだと言うのだ。
私たちがどのような未来に向かっていて、どのようにそれを切り開いていけばいいのかを、読者に提示しなければ、いいテーマにはならない。
世の中に対して何らかの問題意識を持っていて、その真相を分析し、自分の考えを世に広めたい、そのような人にはノンフィクション・ライターは天職かもしれない。
調べる技術・書く技術 (講談社現代新書 1940) | |
野村 進
講談社 2008-04-18 おすすめ平均 |
就職活動の成功って、何だろうか。
内定を取ること?
後輩が面接に合格し、内定を取ったと言ってきた。
祝福した後、「志望動機はなんだったの?」と聞いて見た。
「機械を操作して部品の製造を通して~なんちゃらかんちゃら~車などを作ることに興味がありました。」(と面接官に答えたらしい)
ボー読み出し、実感がこもってないので、あらかじめ用意した台詞のように感じた。
そこでもう一つ質問してみた。
「で、何でその会社に入ることにしたの?」
「とりあえず生活できればいいので、働けるならどこでもいいと思って…」
なるほど、志望動機は面接に受かるための「建前」であり、本音は別のところにあるわけだ。
相手の受けがよさそうな答えを本音かどうかに関わらずあらかじめ準備しておいて、気に入られようと頑張る。
これって、結構たくさんの人がやっていることだと思う。
私の就職活動中もそういう人はいたし、6人でグループ面接していたとき、私以外の5人が明らかにこの手だったこともある。
でもこれって、嘘をつくことじゃないだろうか。
しかも、相手に対してだけでなく、自分に対しても嘘をついているのが非常にまずい。
面接では内定を取るために、本当の自分ではなく、その企業にぴったりの優秀な架空の人物Aを演じる。
そんな演技を見抜ける企業ならその人は「不誠実な人物」として片付けられるだろうし、見抜かれず内定を得ようものなら、それは嘘で相手を騙したことになる。
相手が必要なのは架空の人物Aであり、あなたは必要ないかもしれないのだから。
でもそれ以上に自分に嘘をついているのがまずい。
「ありのままの自分では認めてもらえない」と自分を卑下することに他ならないからだ。
そういう人は本当の自分に向き合って、自分の嗜好性に合う環境を見つけることはまずできない。
自分に価値があるという自信がないから、前向きな目標も生まれず、当然そこから俯瞰逆算的に考えてどのような職場を選べばいいか、絞り込めないのだ。
結局自分に合わない企業を選んでしまったことに後で気付いても、自分に自信がない人に転職なんてできないだろう。
リストラや倒産におびえながら会社にしがみつく毎日が続くと思うとぞっとする。
私は就職活動を、「自分はこういう人間だから、そういう人材がほしいかどうかは後は皆さんで決めてください」くらいのスタンスでいいと考えている。
だから結局のところ、就職活動の成功は、「志望動機とその会社を選んだ理由が一致するような会社を選ぶこと」だと私は思う。