第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい (翻訳) | |
沢田 博 阿部 尚美
光文社 2006-02-23 おすすめ平均 |
マルコム・グラッドウェルの「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」を読みました。
“Have the courage to follow your heart and intuition.”
「自分の内なる声と直感を信じる勇気を持ちなさい」これはSteve Jobsの言葉ですが、本書ではこの「直感」を「一気に結論に達する脳の働き」と定義し、「適応性無意識」と呼んでいます。
対して適応性無意識は強力なコンピューターのようなもので、人が生きていくうえで必要な大量のデータを瞬時に、なんとかして処理してくれる。
瞬時に下した判断も、慎重に時間をかけて下した結論と比べて、けっして見劣りしない。
潜在意識が、顕在意識を用いてじっくり判断する時の何倍もの情報・データを瞬時に処理して、直感として答えを導き出してくれるのだとしたら、情報過多が叫ばれる現代社会において潜在意識を上手く活用できるかどうかは、今後非常に大きなテーマとなりそうですね。
しかし、直感には弱点もあるようです。
例えば、アメリカで膨大な数の一般人の人生行路を追跡した大掛かりな調査データによると、年齢、性別、体重と言った変数を補正した場合、身長2.5センチは1年間の給料789ドルに相当することが判明したそうです。
これはリーダーとしての能力と立派な体格を自動的に結びつけてしまうという、無意識の偏見が引き起こしているのですが、このように「偏見」や「第一印象」といったものによって、たびたび私たちの「直感」は曇ってしまいます。
私も直感で何度か失敗した経験があるのですが、本書を読んで自分の直感をより活かすためには、もっと正しい知識と経験を身につけなければならないのだと痛感しました。
本書では、発砲する可能性のある男と対峙する二人の警官の心理が例として取り上げられています。
一人は緊迫した状況のあまり、実は相手は怯えていただけで銃を持っていなかったにもかかわらず誤って撃ち殺してしまいます。
それに対しもう一人は、相手のしぐさ、表情、動きの一つひとつを適切に判断し、相手が発砲するつもりがないことを見抜き、無事取り押さえることに成功します。
緊迫した状況で、判断を下す上でじっくり考えているような時間の余裕はなかったのは両者とも同じだったにもかかわらず、こうも判断力に差が出たのは、後者が正しい知識と経験を身につけていたために「時間の流れを遅くすることが出来た」ことにあります。
後者の警官は、2秒、もしくは1.5秒という短い時間の中で、「銃を見る」「パールのグリップが見える」「銃口の向きを追う」「銃を構えるか、そのまま地面に落とすか、少年が決めるのを待つ」「少年の顔を見て、危険人物か、怯えているだけなのかを見極める」という具合に何度も適切な判断を瞬時に下していたのです。
ほんの数秒の間の出来事をいくつもの要素に「輪切り」して、一つ一つに対して正しい判断を下せるだけの「知識」と「経験」が彼にはあったのです。
「輪切り」は、さまざまな状況や行動のパターンを、ごく断片的な観察から読み取って瞬間的かつ無意識のうちに認識する能力のこと。
私は書店で本を買う際には「はじめに」「おわりに」を読んだり、目次を見たり、パラパラとめくってみたりしてから買うかどうかを判断するのですが、「買って正解だった」と思うときもあれば、「買わなければ良かった」と思うときもあります。
たくさん本が並んでいて一冊一冊を丁寧に調べる時間がない中で、瞬時に今手に取っている本が良いかどうかが判断できるためには、
●「見るべき場所を分かっているかどうか」
●「見るべき場所を見て良し悪しが正しく判断できるか」
という「輪切りの力」が必要なのであって、それがまだまだ自分には足りないのだと本書を読んで思いました。
無意識が正しい判断を瞬時に下すためには、いかに正しい知識や経験を潜在意識に落とし込めるくらいにまで身につけることが出来るかが、カギになりそうですね。
そういえば勝間さんも「起きていることはすべて正しい」のなかで、潜在意識の重要性につれて触れられていましたね。
潜在意識については、もう少し勉強してみる必要がありそうです。
第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい (翻訳) | |
沢田 博 阿部 尚美
光文社 2006-02-23 おすすめ平均 |