マーカス・バッキンガムさんの著書、「最高の成果を生み出す6つのステップ」を読んだ。
前作、「最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと」(http://d.hatena.ne.jp/lemoned-icecream/20080516/1210940421)はあまりに素晴らしく、「優れたリーダーには何が必要なのか」ということに強く興味を持っている私は多大な衝撃を受けた。
その著者が新著を出したと聞いて迷わず側予約購入したのだが、またまたやってくれた。
今回は仕事でいかに自分の強みを生かすかがテーマだ。
「人は失敗から学ぶ」とは良く聞くが、実は失敗から学べることは失敗の性質でしかない。
短所をいくら研究しても、長所についてはほとんど学べない。
成功について知りたいならば、成功を研究しなければならないのだ。
そして、すぐれた個人、すぐれた組織は、ただ弱みを克服することでは生まれず、強みを伸ばすことによってのみ生まれる。
人にやる気を出させ、業績を伸ばすのに有効な方法はいろいろあるが、一番の方法は各人の強みを充分発揮させることなのだ。
しかし、著者の調査データによると、実際に自分の強みを充分に仕事に生かしている人は10人に2人しかいないようだ。
その原因は上司であったり配属先であったり仕事内容であるかもしれないが、まずは外的要素ではなく、自分の信念が「10人のうちの2人」になることを妨害している可能性を考えなければならない。
その信念とは、三つの神話である。
●成長するにつれ、人の性格は変わる。
●人はもっとも弱い分野で、もっとも成長することが出来る。
●すぐれたチームのメンバーは、チームのためならばどんなことでもする。
しかし、真実はこうなのだ。
●成長するにつれ、人は本来の自分に近づく。
●人はもっとも強い分野で、もっとも成長することができる。
●すぐれたチームのメンバーは、チームに自発的に強みを提供することにほとんどの時間を費やす。
真実を知ったとき私たちは、重要なのはいかに自分の強みを知り、それを生産的なことに結びつけるかであることに気付く。
もっとも責任ある正しい行動とは、まず自分の強みを明らかにし、勤務時間のほとんどで強みを発揮できるように、時間や役割を調整する方法を見つけ出すことだ。すぐれたチームのメンバーはこのことを理解している。そして、自分が弱い分野に強いメンバーを見つけ出すことを己の義務と心得ている。かくして、メンバー一人ひとりが円熟していないからこそ、チームが円熟したものになる。
これを読んで私が真っ先に思い出したのは元ブラジル代表サッカー選手、ロナウドだ。
彼はチームのために守備に奔走することはめったになく、自分が得意なゴールに近い場面以外ではほとんど仕事をせずにサボっている。
しかしそれは、彼が自身の強みはゴールすることにこそあることを知っていたからなのだろう。
守備に奔走して体力を消耗し、肝心なゴールを決める場面で最大限の力を発揮できないくらいなら、守備は放棄して自分の強みだけに専念したという意味で、彼は真のプロフェッショナルだったのだ。
さて、神話を打ち砕き、自分の強みを生かすことの重要性がわかったら、今度は自分の強みを明確にする必要がある。
あなたの強みは、あなたの実際の行動によって明らかになる。強みとはあなたの行為そのもの、具体的には、いつでもほぼ完璧にやりとげられる活動なのだ。
強みは、以下の三つの異なる要素からなる。
●資質
●スキル
●知識
資質は共感性、積極性、競争性など、生まれつき、そして今も変わらず備えているものであり、これは習得不可能なものだ。
これは状況にかかわらずいつでも活用できる強みである。
それに対しスキル、知識は生まれつき備わっているものではなく、身につけるものであり、習得可能である。
それを頭に入れた上で、毎週の現実の仕事にどんな気持ちで自分が取り組んでいるのかを正確に知り、強みを示す四つのSIGNに注意することで、私たちの真の強みを知ることが出来る。
強みを示す四つのサインとは、
●成功(Success)
●本能(Instinct)
●成長(Growth)
●必要性(Needs)
である。
得意な活動であれば、しばしば高い成果を挙げ、成功することがある。
しかし中には、能力はあっても好きになれない活動がある。
それを続けることは私たちを消耗させることになり、「真の強み」にはなりえない。
真の強みには「やらずにはいられない」という性質がある。
そして、実際にやっているときは高い集中力を発揮でき、あっという間に時間が過ぎる。
そして、その活動を終えた後には満足感を得、自分らしい、自分にぴったりという感覚が湧いてくる。
つまり、強みとは自分を強いと感じさせる活動であり、欲求が能力を引き出すのだ。
興味のある活動には力を注ぐので、その活動には磨きがかかる。するとあなたはまたその活動に力を注ぎ、さらにすぐれた成果を収められるようになる。このスパイラルは上へ上へと伸びる。あなたは欲求に動かされて活動に取り組み、取り組むことですぐれた成果を導き出す。これをもう一度SIGNに置き換えると、まずあなたはI(本能)によってある活動に引き寄せられ、G(成長)によって持続的にその活動に従事し、N(必要性)によって最高の気分を味わう。するとまたIに戻り、最初からそれを繰り返す。欲求によって引き出された能力は、まえへ上へと伸びていくのだ。
ただ一つ注意したいのは、欲求はあるが能力がない活動だ。
それで生計を立てられないような活動であれば、「趣味」にとどめておくべきだ。
本書は
ステップ1 神話を打ち砕け
ステップ2 明確にせよ
ステップ3 強みを解き放て
ステップ4 弱みを封じよ
ステップ5 人に伝えよ
ステップ6 強い習慣を作れ
という流れになっており、ステップ2の後半からはワーク形式になり、それぞれのステップをいかに実行していくかを示している。
まだこれらのワークは私には早そうなので、来年、再来年にもう一度読んで、実行することにした。
とりあえずその前に、著者の前々作、「さあ、才能に目覚めよう」を読んで、自分の資質を掘り下げてみようと思う。
以下、私用メモ
●性格の45から50%は生来備わっている(ここでいう性格とは競争心が強い、臆病、我慢強いなどの資質のこと)
●性格を形成する残りの50から55%は機会と仲間によって左右される
●自分だけの得意分野、それは自然が与えた勝利のための戦略である
最高の成果を生み出す 6つのステップ | |
加賀山 卓朗
日本経済新聞出版社 2008-06-24 おすすめ平均 |