坂本桂一さんの著書、「新規事業がうまくいかない理由」を読んだ。
本書は企業内起業、それも既存の事業とはあまり関係のない分野に進出する際の「注意すべき事項」を提示し、いかにすれば新規事業を上手に活用できるかを示唆したものです。
「ヒト」「モノ」「カネ」とそろう大企業が何故しばしば企業内起業に失敗するのかというと、どうやらその要因は「モチベーション」と「ハングリー精神」にありそうです。
これは私も感じることなのですが、そもそも就職先に大企業を選ぶ人というのは多くの場合「安定」を求めている人たちです。
たとえ能力的には優秀であっても、新規事業立ち上げに関わるという冒険をあえてしたいとは思わないのが普通だと著者は述べます。
そこを理解せずに挑んでしまうため、企業内起業というのは多くの場合ハングリー精神にあふれた企業化集団には勝てないのだそうです。
そこで、重要なのはこの前提を理解したうえで、ハングリー精神やモチベーションの乏しい人間がオペレーションを行うことを前提とした事業モデルを選ぶ、もしくは、少数の非常にモチベーションの高い人間だけでマネージできる組織を考える、ということになります。
本書を読むと、豊富な企業の資金力を元に充実した教育を受けている優秀な大企業のサラリーマンも、「起業」になると全くの「素人」になってしまい、更に社員のみならず企業自体も「素人」になってしまいがちなのが良く分かり、面白いです。
「モチベーション」と「ハングリー精神」という大企業にない強みを充分に生かして新しい分野に打って出れば、やはりベンチャー企業には大きな勝算がありそうです。
「安定志向」「ベンチャー志向」どちらの人が読んでも面白いと思います。
以下、私用メモ
新規事業従事者の陥りがちな罠
1.全方位にまんべんなく労力をかける
・やるべきことはいっぱい→大事なのは限られたソースをどこに集中するか
・事業コンセプトや収益構造の設計こそ重要
2.考えずに調べる
・新規ビジネスに過去の知識や常識は不要
3.すぐに閉塞感におそわれる
・新規事業立ち上げがどういうことかを知らないのが原因
・ベンチャーが最初から順風満帆なんてありえない
4.過去の経験のなかに課題解決の方法を探す
・過去の経験や事例はむしろ足かせになる→ゼロベースで考える
5.リソースがないという嘘に縛られている
・人材がいない、予算が足りない、経験者がいない→そんなのは決定的な要因ではない
・誤った認識をしている担当者がむしろ問題
会社が陥りがちな罠
1.成功が前提となっている
・ほとんどは失敗に終わる
2.撤退の際のルールが明確になってない
・思い切った投資ができなくなる
・撤退すべき状況でもずるずると続けてしまう
3.意思決定に多くの人がかかわり過ぎる
・百害あって一利なし
・できるだけ少ないほうがいい
新規事業がうまくいかない理由 | |
坂本 桂一
東洋経済新報社 2008-08-29 おすすめ平均 |