野口吉昭さんの著書、「「夢とビジョン」を語る技術―「いっしょに仕事がしたい!」と言われる」を読んだ。
「夢とビジョンを語る技術」と題するに妥当な内容ではないと思います。
本書の主張は、『今組織では、現場を知らない「トップの夢」を、現場の状況を踏まえてより現実的な「ビジョン」にすることのできる、ミドルマネジメントが求められている』、にとどまっています。
確かによいビジョンを描き、メンバーを上手に巻き込むことが出来れば、組織の活力は何倍にもなると思います。
しかし、だからこれからはミドルが夢やビジョンを語りなさいと言われてすぐに効果が出るような、簡単な問題でもないでしょう。
そこの部分をより詳しく扱って欲しかったのですが、どうも本書はあっちにいったりこっちにいったりでまとまりがなく、結局何を言いたかったのかが分かりにくい内容で、そもそも本書にビジョンはあるのかと疑問に思ってしまいました。
しかし、部分的には面白い内容もあります。
小さい組織のほうがミッションやビジョンが明確になりやすいので、トップの描く「夢」を現場のビジョンに翻訳する「ビジョンの最大化」こそがミドルの一番の仕事であり、よってミドルが元気な組織ほど強い組織なのだと本書は述べています。
そこで、現場のリーダーであるミドルにはマネジメント能力と共に、ビジョンシップ(ビジョンの再構築能力)が求められる、と書かれているのですが、一人の人間がビジョンシップとマネジメント力の2軸で優秀であることは非常に難しいと思います。
私はそもそもリーダーとマネジャーはまったく別のものだと思います。
リーダーは未来を描く人であり、軸が「未来」にある。
マネジャーはメンバーの特徴を把握し、それぞれが自分の力を最大限発揮しつつ高いモチベーションを維持しながら働ける環境を整備する人であり、軸が「人」にある。
そもそも求められる役割も資質も異なる両者を、「現場のリーダー」として一変にミドルに求めること自体に実は無理があるのではないでしょうか。
私は、これらは分業したほうがうまく行くのではないかと思います。
それぞれの組織にビジョンを描くリーダーと、人をマネジメントするマネジャーがいて、各々が得意なポジションで役割分担させたほうが、それぞれの役割を最大限組織の中に活用することが出来るのではないでしょうか。
ミドルにパートタイマー的にビジョンを描かせても、そもそも資質がなければたいした成果は出ないと思います。
自分の強み(好きで得意なこと)を生かす時代ですしね。
もちろん、両方の資質を持っていればその限りではないでしょうが。
「夢とビジョン」を語る技術―「いっしょに仕事がしたい!」と言われる | |
野口 吉昭
かんき出版 2003-09 おすすめ平均 |
4 Comments
こんばんは!
なるほど、リーダーとマネジャーを分業すること
確かにメリットがあるような気がしますね。
ただ実質ほとんどの会社が優秀なリーダーはいるのだが
人材が不足していたりと同一ポジションになってしまっていたりという現実があるように思えます。資質と似ているかもしれないですが
やっぱり学ぶ姿勢が大切なのかななんて思えますね。
hiroさん
いくら資質があってもそれを磨く努力をしなければ決して「強み」にはならないので、
おっしゃるとおり、やはり「学ぶ姿勢」は大切ですよね!
個を生かす組織はスポーツにたとえると分かりやすいのではないかと思うのですが、
例えばサッカーでは金太郎飴のような11人の選手をフィールドに配置しても勝てず、
それぞれのポジションにおける優秀な選手を適材適所で配置することで
チームとしての総合力が向上するのだと思います。
攻撃力のあるスタープレイヤーをかき集めても勝てないことは、
数年前に「銀河系」と呼ばれたRealMadridが3年間無冠で終わったことによって証明されたと思っているのですが、
人材不足を解消するために今後は企業も、
早い段階で個々の資質を見抜き、それをベースにした育成、
配置をしていくようになるんでしょうかね?
リーダーとマネジャーの違いかぁ…
言われてみればそうですねぇ、なんかしっくりきました。
どの本か忘れたんですが、これからの組織論としてトップ・ダウンでもボトム・アップでもなく、ミドル・アップダウンというような組織が成功すると聞いたことがあります。
この組織はまさしくミドルマネジャーが中心的役割を担うもので本書に似てるなぁって思いました。
ミドルマネジャーって書くとちょっとかっこいいけど、一歩間違うと中間管理職に見えてしまうのがタマニキズですね(笑)
マックさん
恐らく酒井穣さんの「はじめての課長の教科書」ではないですかね?
部下のモチベーション管理と言う「下向きの目線」と、
トップの夢と現場の状況を結びつける実行作を創造する「上向きの目線」
の両方を兼ね備えると言う意味でミドル・アップダウンと述べていたと思います。
「夢やビジョンを語る」のではなく、
あくまで夢と現状を結ぶ役割だというのが違いでしょうか?
>一歩間違うと中間管理職に見えてしまうのがタマニキズですね
資質がある人を抜擢すればミドルマネジャーになっても、
年功序列などで決めてしまうと中間管理職にとどまりそうですね(笑)