東郷雄二さんの著書、「打たれ強くなるための読書術」を読んだ。
残念ながら私にはちょっと物足りない内容だった。
著者は現代の若者に対して、本を読む習慣がないことから、「知的に打たれ弱い」人達が増えていると訴えている。
どういう人かと言うと、以下のような人達だ。
●すぐに解答をほしがる
●どこかに正解がひとつあると信じている
●解答に至る道をひとつ見つけたらそれで満足してしまう
●問題を解くのは得意でも、問題を発見するのが不得意である
●自分の考えを人に論理的に述べる言語能力が不足している
そこで知的に打たれ強くなるための読書術が出てくるわけだが、特に目新しい情報や理論があるわけではなく、これといった発見が残念ながらなかった。
それよりも主張の内容とはそれほど関係があるとは思えない雑学が頻繁に出てきたり、「あらゆる本は著者の主観というバイアスがかかっている」という主張の例として「日本の歴史は今考えられているよりも一万年は古く、超古代には宇宙船が飛び回っていた」と述べているような著書を引っ張り出してくるなど、首を傾けたくなる部分が目に付いてしまった。
また、知的に打たれ強いというのが結局どういうことなのかというのも、あまり語られていない。
中身が薄くつまらない本(著者はスカ本と呼ぶ)を読んだ日には、その本を読むために払ったお金と費やした時間がもったいなく、悔しくて夜も眠れなくなると著者は言うが、打たれ強いとはあまり思えない。
ただ、著者の言う「複数の視点を獲得する」ということは重要だと思う。
ひとつの視点からだけ物を見ていると、自分の考え方が絶対に正しいものに見えがちである。
「自分を組み換える」ということのひとつの意味は、複数の視点からの物の見方を学ぶと言うことでもある。
自分が自分の考えや主張を正しいと考えているのと同じように、他人も自分を正しいと考えているのだと言うことを理解し、自分と異なる価値観を許容する姿勢を持つことは、「自分が絶対ではない」ことを認めることでもある。
多様性や可能性を認める余裕を持った、「知的に打たれ強い」人になりたいと思う。
打たれ強くなるための読書術 (ちくま新書) | |
東郷 雄二
筑摩書房 2008-02 おすすめ平均 |