杉山茂樹さんの著書、「4-2-3-1―サッカーを戦術から理解する」を読んだ。
今までワールドサッカーダイジェストなどのサッカー雑誌は定期的に講読していたが、今回読んだような「戦術に特化した著書」は初めてだ。
著者はライターとしてサッカー専門誌などで執筆しているのだが、海外取材も多く、何度も日本と海外を往復しながら、ファンハールやヒディンクといった「名将」と呼ばれるような世界の戦術家たちに直に話を聞く機会も多いようだ。
その著者の言葉に耳を傾けると、日本が今までどれだけ時代錯誤で拙いサッカーをしてきたかがよくわかる。
日韓ワールドカップでトルコに消化不良な試合で負けたのも、ドイツワールドカップで何もできずに惨敗したのも、わかりきっていた「必然」であったのだ。
トルシエは攻撃的サッカーを志向するといいながら戦術の流行からは当時衰退していた「フラット3」なる3-4-1-2という守備的な布陣を選択した。
ジーコも、南米にも欧州にも個人スキルで明らかに劣るにもかかわらず「戦術」という知恵を絞らず、ブラジル的な強者のメンタリティーで「4-2-2-2」という攻撃と守備を分担するような相当時代遅れな布陣を用いた。
どちらも攻守のキーポイントとなる両サイドに一人ずつしか配置せず、常にサイドの攻防で劣勢を強いられたことも共通する。
また、当時多くの日本人が戦術を「3バックか4バックか」のまるで2択しかないかのように語っていたが、3バックと4バックにもいろいろなバリエーションがあるし、そもそもディフェンスの数だけでサッカーをするわけではない。
ディフェンスに多くの人数を裂く4バックよりも3バックのほうが攻撃的だなどという指摘がいかにまとはずれなことか。
これも、戦術を「司令塔」や「ボランチ」など、選手のキャラクターで語ってしまうことに原因がありそうだ。
サッカーに興味のある人なら、是非本書を読んでおくべきだと思う。
きっと、サッカーを見るときの視点が変わるはずだ。
といいつつ、今朝行われたマンチェスターU対バルセロナの試合は睡魔に負けて見れなかったが。
4‐2‐3‐1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書) | |
杉山 茂樹
光文社 2008-03 おすすめ平均 |