アップルコンピューターを創ったカリスマ、スティーブ・ジョブズを追った非公認ノンフィクション、「スティーブ・ジョブズ-偶像復活」を読んだ。
アップルコンピューターを創立し、Macによって熱狂的な支持を勝ち取りながらも1985年、自分の会社から追放される。
しばらく荒野をさまようも1997年、低迷するアップルの「救世主」となるべく、CEOとして復帰する。
そんな彼の「偉大な第二幕」を中心とした波乱万丈のこれまでの経歴とともに、時に自分勝手で短気でありながら人々を惹きつけてやまないカリスマ的魅力を500ページに凝縮したのがこの一冊だ。
夢中で読み終えたころには、私はすっかり彼のファンになってしまった。
彼の最も優れた才能であり、かつ彼を成功に導く最大の要因となったのは、彼の持つ「ビジョンの力」ではないかと思う。
著書では彼を、このように評している。
スティーブとは、信念と猪突猛進の人である。だからこそ、慎重な人ならさけることをしてはひどい目にあうのだが、同時に、信念と猪突猛進の人だからこそ、慎重な人がみんないなくなったあとも、ひとりのこって時代を切り拓くことができるのだ。
スティーブ・ジョブズは輝かしい未来へのイメージを創造し、そこに類まれなる情熱を注ぎ、どんな障害があろうと絶対にたどり着こうとする強い信念と行動力の持ち主だ。
そして、自分の仕事を心から愛していた。
その性格が災いして、周囲の反感を買うなどいろいろ問題を起こしたのも事実だ。
しかし、そんな彼だからこそ、常に最後までやりとおす情熱を燃やし続けられたのもまた事実なのだ。
しかし、ただビジョンを掲げ突き進むだけではない。
同時にそのビジョンを語り、仲間の心に灯をつけてしまうのが彼の偉大なところである。
彼と仕事をともにしたある人は以下のように述べている。
リサの話になるとスティーブは、『宇宙に衝撃を与えるほどのものを作ろう』とよく言っていました。
そんなばかなと思いますよね。
でも、それでやる気になるものなんです。
特に、遊びもせずに研究室あたりに閉じこもっているエンジニアなんかは。
スティーブには、おそろしいほどのカリスマ性があります。
彼が何かを信じると、障害だろうが問題だろうが、カリスマ的なビジョンの力で一掃されてしまいます。
存在しなくなるんです。
また、アップルが成功した理由についても、以下のように述べている。
自分たちがしていることを心から信じていたからです。
お金のために仕事をしていたのではなく、世界を変えるために仕事をしていた。
だからなんです。
いくら優れたビジョンを創ったところで、それを掲げるだけでは意味がない。
現場で働く人たちが同じ思いを共有できなければ、それは飾りに過ぎないのだから。
彼は自分と同じように、仲間たちも輝かしい未来へ向けて猪突猛進させることができたのである。
彼は超一流のビジョンの伝道師でもあった。
彼はいまや、コンピューター、映画、音楽という3つの業界に革命を起こし、3つの業界で偉大なる「icon」=「偶像」になるという前代未聞のハットトリックを成し遂げたスーパースターである。
彼が次に何をして見せてくれるのか、楽しみでならない。
スティーブ・ジョブズ-偶像復活 | |
井口 耕二
東洋経済新報社 2005-11-05 おすすめ平均 |