マーカス・バッキンガムさんの著書、「最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと」を読んだ。
久々に日記の更新が夜になったが、それにはわけがある。
本書があまりにも面白く、じっくり読みたかったため朝読み終えることができなかったのだ。
はっきり言って、絶対に読んでおきたい一冊だ。
本書では、最高のリーダー、マネジャーがそれぞれ共通して持つ「たった一つのこと」、言い換えれば、彼らを最高たらしめている「隠れた原則」をとことん突き詰めている。
まず、両者は決して交換可能な役割ではない。
リーダーの役割とマネジャーの役割は100%異なり、出発点、必要な才能も違う。
当然、「たったひとつの隠れた原則」も異なる。
最高のマネジャーの「隠れた原則」、それは部下一人ひとりの特色を発見し、それを有効に活用することだと著者は言う。
仕事の質を保つこと、顧客サービスを徹底させること、基準を定めること、高い業績のチームを作ること、これらももちろんマネジャーの価値ある成果だ。
しかし、これらはあくまで「結果」であって、「出発点」ではないらしい。
出発点は、部下一人ひとりの才能なのだ。
それを表した、著者の絶妙な言い回しを聞いてほしい。
すぐれたマネジャーはチェスをする
チェッカーとチェスの一番の違いは、チェッカーの駒の動きはみな同じだが、チェスの駒の動きはそれぞれ異なる点だ。
チェスで勝ちたければ、駒それぞれの動きを覚え、全体的な戦略にそれらの特性を組み込まなければならない。
凡庸なマネジャーは部下を使ってチェッカーをする。
(中略)
要するに、凡庸なマネジャーは、マネジメントを、型にはめる仕事、与えられた役割を完璧にこなすように部下一人ひとりを作り変える仕事と信じているのだ。
(中略)
真のマネジメントは、解放することである。部下一人ひとりのユニークな貢献、要求、スタイルに完全な自由を与えるよう、つねに職場環境を整える仕事だ。
では、リーダーの場合はどうか。
最高のリーダーの「隠れた原則」、それはよりよい未来に向けて人々を一致団結させることだ。
そう、最高のリーダーの出発点は、未来なのだ。
はっきりとした未来のイメージこそが、リーダーを突き動かす。
多くの人が不安を感じる先行きの見えない「未来」、そこに明確なイメージを描き、皆を勇敢に導くのがリーダーなのだ。
ここでのキーワードは「明確」であることだ。
有能なリーダーは情熱的である必要はない。魅力的である必要もない。才気あふれる人物、親しみやすい人物でなくてもいい。弁舌に長けていなくてもいい。ただ明確であればいいだけだ。
(中略)
明確さへの欲求に答えてもらったときに、私たちのなかに自信と、ねばり強さと、活力と、創造性が生まれるということだ。
そして、著者はこのリーダーの「隠れた原則」を支える才能を、「楽観主義」と「自我」だと結論付けた。
苦境にあっても、鮮やかに明るい未来をイメージしてみせる。
「現実」と「可能性」の衝突に奮起し、前進することに心惹かれる。
天才的に楽観主義でなければ、こうはいかない。
そして、その苦境を照らすのは、明るい未来を実現させるのは「自分しかいない」と、己の全存在をかけて信じる自我がある。
リーダーは謙虚とは程遠い。
控えめな目標を設定する、控えめな夢を抱く、己の能力を控えめに評価する、これらはすべて不要なものだ。
上記だけでも大変なボリュームだったのだが、本書はまだまだこんなものではない。
上記の主張を正しいものだと確信させるに十分な検証が多く展開されている上、「隠れた原則」をどのように磨くべきか、どのように発揮させるべきかといったことまで扱われている。
また第Ⅱ部では、個人の継続的な成功についてあなたが知らなければならないたったひとつのこと、というテーマも扱われていて面白い。
どれも説得力があり、かつ明確な素晴らしい内容だ。
手元において何度も読み返したい、良書だった。
以下、自分用のメモ
●成功はバランスを求めるものには訪れない、アンバランスに偏った集中が跳躍のエネルギーになる。
●マネジャーが企業のために働く唯一の道は、まず部下のために働くこと
●優れたマネジャーに必要な才能は、教育本能と個々の違いを感じ取る能力―「強みと弱み」「引き金」「学習方法」を知る
●正確な自己評価は成果を引き出さない、(現実的でなくても)自信だけが成果を引き出せる
●目の前の課題のむずかしさについては100%現実的に評価し、それを乗り越える自分の能力については非現実的なまでに楽観する
●すぐれたリーダーは、普遍的なことを発見して、それを活用する
●「明確さ」―誰のために働くか、核となる強みは何か、核となる尺度は何か
●自分がしたくないことを見つけ出し、それをやめる
●最高のリーダーは、考える時間を作る、慎重にヒーローを選ぶ、練習する
最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと | |
Marcus Buckingham 加賀山 卓朗
日本経済新聞社 2006-01 おすすめ平均 |