遠藤功さん監修の著書、「事業戦略のレシピ」を読んだ。
絵に描いた餅は食べられない。
本書は「実行できる」戦略を作るにはどうしたらいいかを、作成プロセスごとに順を追って解説したものだ。
戦略とは何かを端的に言うと、「夢と現実のギャップを埋めていくシナリオを設計していくこと」となる。
そして戦略策定には4つのステップがある。
①現状分析
②戦略オプション策定
③オプションの評価・絞込み
④計画・アクションへの落とし込み
ギャップを埋めるための適切な戦略を練ることは、現状分析、つまり敵を知り、己を知ることから始まる。
業界の成功要因や自社および他者の強み、弱み、ポジショニングの分布などを分析し、そこからどういった戦略が有効かをリストアップする。
そしてそのリストから実行に移す戦略を絞り込むのだが、ここで重要なのは「いかに当事者の腹に落ちる選択が出来るか」である。
当事者にとって思い入れのない計画は絵に描いた餅になるだけだ。
そして最後に実際のアクションがイメージできるところまで計画を落とし込む。
その際実行した結果がモニタリングできるようにしておけば、戦略の効果が見えやすくなり、「Plan-Do-Chek-Action」のサイクルにつながる。
本書では各ステップにおいて利用できる効果的なツールがいくつも紹介されている。
が、重要なのはツールを用いて分析することではなく、その分析結果から何を見るかであるということは覚えておきたいと思った。
この「何を見るか」というのは判断を愚直に繰り返すことで訓練して身につけるしかない。
また、効果的な戦略を策定しやすい強い経営を実現するには、組織の「見える化」が重要になる。
企業活動において、「見える」ということは競争力の源泉と言っても過言ではない。経営から現場に至るまで、悪いことから良いことまで必要な情報が必要なタイミングで「見える」状況になっていれば、必要なアクションを適切かつ迅速に実施することが出来る。
つまり、組織の隅々に「見える化」が企業インフラとして整備され、経営思想として定着している企業は強い経営を実現している企業である。
強い経営というのは、「骨太で合理的な戦略」と「自ら問題を発見し解決する強い現場力」の両方を兼ね備えていることが条件であり、それらを実現するための前提が、「管理のための見える化」と「自律のための見える化」である。
組織が大きくなるほど情報量も増え、また現場と上層部の距離も広がるため、情報共有は難しくなりがちだ。
変化の時代であり、戦略策定のスパンが長くて3年とかいうことになると、
●組織が小さい
●情報共有がスムーズで「見える化」されている
●フットワークが軽い
という企業がこれからますます力を発揮することになりそうだ。
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遠藤 功
日本能率協会マネジメントセンター 2008-05-07 おすすめ平均 |