酒井穣さんの著書、「はじめての課長の教科書」を読んだ。
はじめての、中間管理職である「課長」に焦点を当てたビジネス書だ。
欧米にはそもそも「課長」というポストがない。
日本はマネジメント理論を基本的には欧米から輸入しているため、日本において重要な位置を占めている「課長」という大切な役割が、もはやこの先なくなるものかのように考えられている。
しかし、現実に今日本の企業において、課長が果たす役割は大きい。
課長には「ミドル・アップダウン」な活動が求められる。
その最も大きな役割は、部下のモチベーションを管理することと、企業のトップが描く「夢」と末端社員が見る「現実」の橋渡しをすることの2つだろう。
まず課長には「下向きの目線」が必要だ。
成果主義による外側からの圧力で部下を動かすのではなく、より本質的な、部下の内側から湧いてくるモチベーションを管理することで、部下が自らの力を最大限に発揮できるよう努めなければならない。
そして同時に、「上向きの目線」も求められる。
企業のトップは壮大な「夢」を描くが、往々にしてトップは現場に精通していないため、具体的に何をすればいいのかを分かっていない場合が多い。
そこで、日々現場に直面している末端社員からの「現場情報」と上から送られてくる「夢」を結びつけ、具体的な実行策に落とし込む「知識創造」が課長には求められるのだ。
つまるところ課長は、チームを結成し、組織のビジョンに精通し、かつ現場状況を考えつつ、具体的なアクションを考え、実行すると言う、「ベンチャーの社長」のような役割が求められるのだ。
本書はそこに注目し、
●課長とは何か?
●課長の8つのスキル
●課長が巻き込まれる3つの非合理なゲーム
●避けることが出来ない9つの問題
●課長のキャリア戦略
という章立てで課長について解説した、まさに「教科書」だ。
しかも本書は、時として課長が向き合うことになる「非合理」や「不条理」に対して理想論をかざすのではなく、どううまく対処することで切り抜けられるかという視点で語られるため、非常に実践的で、即効的である。
これから課長になる人や今課長である人はもちろん、課長の重要性を再認識する意味でも経営者の人たちにも一読を強く勧める良書だった。
以下、自分用のメモ
●部下が「自分は会社に必要とされている」という実感が持てるよう管理することが、モチベーション管理の重要なポイント
●部下のプロフィール(家庭環境、性格、長所、短所、モチベーションの源泉)などを熟知するよう努める
●成果主義はときにチームワークを破壊する
●異なる価値観を持つ世代同士をまとめる上で共通の価値観である「顧客第一主義」は橋渡しになる
●風通しの良い(情報共有を徹底している)企業=イノベーションが起こる可能性がある、役割分担が明確な企業=イノベーションが起こらない
●部下が「何かあれば課長に守ってもらえる」という実感を持って、安心して業務に取り組めるような環境を作る
●部下を褒めるとは、感謝を示しつつ部下の進むべき方向をはっきり示すこと
●褒める、叱るの反対は「無関心」
●事業に成功して株式上場までいけるのは、1000社に2、3社程度でギャンブルであり、背水の陣で挑んではいけない
●社会はアイディアよりも、アイディアを形にするために、無理のない戦略を構築し、人を説得することに長け、資金を集められる経営者を求めている
はじめての課長の教科書 | |
酒井穣
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2008-02-13 おすすめ平均 |