株式会社エニグモ共同最高経営責任者、須田将啓さん・田中禎人さんの共著「謎の会社、世界を変える。―エニグモの挑戦」を読んだ。
「世界初」を連発する今注目のベンチャー「エニグモ」の企業物語が、実際の起業者によって語られており、臨場感満載で非常に面白い。
2004年の会社設立依頼、2005年2月に第一弾サービス「BuyMa」グランドオープン、2006年3月に第二段サービス「プレスブログ」開始、2007年2月に第三弾サービス「filmo」開始、同年9月に第4段サービス「rollmio」でアメリカ進出、2008年1月に第5段サービス「シェアモ」開始と、次々と「世界初」のサービスを生み出すエニグモ。
その企業物語から感じたのは、ベンチャーには、
●優れたビジネスモデルとそれを何が何でもやり遂げる想い
●「想い」を共有できるビジネスパートナー
●「スピード」と「スモールスタート」
が必須であるということだ。
優れたビジネスモデルは、まずアイデアがなければ始まらない。
エニグモの優れたアイデアは、最新の情報・動向や自社の状況を頭にインプットし、それらを頭の中で様々な角度から組み合わせていく中で自然と生まれている。
そして、「何が何でも実現させてやる」「二人で世の中を変えるぜ」という創業者の想いがあったこと、それが困難にあいながらも決してあきらめずに様々な方法を試し続ける行動力につながったことが、エニグモのサービスが実現できた大きな要因の一つだと思う。
同時に、その創業者の「想い」を共有でき、ビジネスライクな取引ではなく、共に何かを実現していくような「パートナー」に恵まれたことも大きかった。
第一弾サービスである「BuyMa」のシステム開発を某有名な上場IT企業に依頼したとき、オープン一週間前になって「できなかった」と言われたようだ。
結局単なるビジネスの関係であったため、創業者の持っていた「夢」や「想い」などはお構いなしで、「たかがベンチャー」くらいの軽い対応をされたのである。
しかしそこであきらめずに新たな受託先を探し、今度は「想い」を共有でき、共にそれを実現していこうと言うパートナー企業を見つけることが出来た。
期日までにしっかりとシステムを完成させてくれただけではなく、「ベンチャーだから金銭的にも余裕はないでしょう」とエニグモ側に有利なようにいろいろと計ってくれたようだ。
そういうパートナーだったからこそ、オープン後に問題が生じたときもリアルタイムで対応してもらえたのだろう。
そして最後に「スピード」と「スモールスタート」だ。
同じようなアイデアを考えている人は他にもいるわけで、問題はいかに一番乗りするかなのだ。
一番乗りして最初にユーザーをつかんでしまった側と、それを後から追う側とでは、優位性が全く異なってしまう。
「100%のものをじっくり作ってからオープンする」ではなく、「60%でもいいからまずはスモールスタートする」が重要なのだ。
海外のネットベンチャーの勢いに比べると、日本は今確実に見劣りする。
しかしそんな中でエニグモのような会社が「世界とはこうあるべき」と純粋にチャレンジしている姿は、「日本でもやれる」「俺たちもやれるんだ」という勇気を私たちに与えてくれる。
こういう会社がどんどん増えていけば、そしてそれに影響を受けて夢を実現しようと起業する人たちが増えていけば、きっと日本、そして世の中はよりよくなる。
「日本にもこんな会社があるんだな」と熱くさせられる一冊だった。
“Make the world a better place.”
小さくまとまらず、何か野心を持てば、仕事だろうと何だろうと人生は楽しくなるはずだ。
謎の会社、世界を変える。―エニグモの挑戦 | |
須田 将啓
ミシマ社 2008-03-14 おすすめ平均 |