ウォレン・ベニスさんの著書、「リーダーになる[増補改訂版]」を読んだ。
本書はリーダーシップとは何か、リーダーになるには何が必要かを研究したものだが、特に印象的だったのは「リーダーはリーダーになろうとして生まれるのではない、自分を表現しようとした結果リーダーとなるのだ」というフレーズだった。
つまり、リーダーの関心は、世間に自分の存在を誇示することではなく、あくまでも自分を表現することに向けられている。この違いは決定的だ。前者は他人に動かされるが、後者は人々をみちびく。前者ならいくらでもいるが、後者はめったにいない。
さまざまなリーダーへのインタビューを重ねた結果、著者はリーダーに誰もがそのうちのいくつかは備えている基本要素を発見した。
1.指針となるビジョン
2.情熱
3.誠実さ
4.信頼
5.好奇心と勇気
である。
繰り返すが、真のリーダーとは自分の存在を誇示するためにリーダーになろうとはしないのだ。
彼らには人々が困難と受け止めるような時代にも輝かしいビジョンが描けてしまい、それを実現させたいと言う情熱がある。
そして誠実であるがために自分自信に対して率直であり、自分の信条と思想に基づいて行動し、それが周囲の信頼を引き寄せ、未来へと導く。
こうして結果的に、彼らはリーダーとなるのだ。
よってリーダーになる道は、他人に動かされることを拒み、人生の舵を自分の手に取り戻すことから始まる。
そして、自分の内なる声に耳を傾け、それに沿って行動するための自分らしい方法を見つけ出すのだ。
そうなると世間に違和感を覚え、孤立感を抱くことも増える。
しかしその現実と理想のギャップの中にこそ、指針となるビジョンがある。
しかしそれを描くだけでは、絵に描いた餅で終わってしまう。
それを実現させるために、リーダーは絶えず意欲的に学び続け、能力を磨き続けなければならない。
また、周囲の力を結集するためにも、品性と誠実さを磨き、人から信頼されなければならない。
すぐれたリーダーは、能力とビジョンと美徳とをほぼ完璧なバランスでそなえている。ビジョンと美徳を伴わない能力や知識は、官僚を生み出す。ビジョンと知識を伴わない美徳は、空論家を生み出す。そして、美徳と知識を伴わないビジョンは、扇動家を生み出す。
リーダーとは何か、そしてどう生み出されるのかが論理的にまとまっていて、非常に読み応えのある良書だった。
以下、私用メモ
●リーダーは、夢を育てる
・リーダーには人をひきつけるビジョン、人を新しい場所へつれていくようなビジョンを生み出し、それを現実に変える力がある
●リーダーは、ミスを抱擁する
・誤りを犯すことを怖れない
・間違ったときは率直に認める
・リスクをとることを奨励する環境を作り出す
・唯一の失敗は何もしないことだと仕事仲間に伝える
・落ちることを怖れず、空高く張り渡されたロープを渡る
●リーダーは、反省を促す反論を歓迎する
●リーダーは、意見の違いを歓迎する
●リーダーは、「ノーベル賞要因」(楽天性、信念、希望)を持っている
●リーダーは、「ピグマリオン効果」を理解している
・すぐれた管理職は、達成可能な高い期待を部下にかける
・部下は、期待されていると思うことを実行する傾向がある
・理想的なのは少しだけ背伸びはするが、何度も挫折することはないような基準を定めること
●リーダーは長期的に考える
リーダーになる[増補改訂版] | |
伊東奈美子
海と月社 2008-06-24 おすすめ平均 |