大谷和利さんの著書、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化 」を読んだ。
本書をよんでやはり感じたのは、アップル社のものづくりの強みは、競争ルールをそのものを変えてしまうところにあるなと感じた。
確かに、薄さ、軽さ、画素数、世界初の技術などは、エンジニアにとっても設定しやすい目標だ。また、自動車の馬力やコンピューターのCPU駆動周波数にも見られる数字の大小、あるいは「世界初」を謳うキャッチコピーは、技術の専門家ではない一般消費者が本当の意味は理解できなくとも、製品の優劣に直結するイメージを持ちやすい。そこで、改良・改善の名のもとに、このような方向性を持つ仕様工場が、半ば必要悪として、あるいは強迫観念的に新製品開発の中に取り込まれてきた。
日本の携帯メーカーにも言えることだが、多くの企業は既存の競争ルールの枠の中で活動し、結果的に似たような製品で他者と顧客パイを奪い合う状況を生み出してしまう。
細かい数字が違うだけで、基本的に仕様が変わらないために価格競争になりやすく、値下げ競争を繰り広げてお互いの首を絞めあうことになる。
いわゆるレッド・オーシャン状態である。
それに対して、アップルがiPhoneで生み出したのはまさにブルー・オーシャンではないだろうか。
iPhoneの対抗馬となるような製品は、今のところ見受けられない。
なぜならば、アップルは既存の競争ルールには縛られず、「自ら土俵を作ってルールを決めた」からだ。
カタログスペック的には機能や仕様で他者のモデルに劣る部分も多い。
例えばおサイフケータイではないし、ワンセグもない。
しかしその代わりにアップルは、デザインや使い勝手、感性などの魅力を徹底的に追求し、それがiPhoneの独自性を生み出した。
アップルが自ら土俵を作ってルールを決めることが出来た背景には、アップルの持つ徹底した顧客思考と、アップル製品に流れるグランドデザイン「デジタルハブ構想」があると思う。
こちらについては本書よりも、
「iPhoneショック ケータイビジネスまで変える驚異のアップル流ものづくり」
の方が詳しいので、そちらがお勧めだ。
同時に、
「ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する」
もあわせて読むと、面白いと思います。
iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化 (アスキー新書 (073)) | |
大谷 和利
アスキー・メディアワークス 2008-08-08 おすすめ平均 |