谷原誠さんの著書、「弁護士が教える 気弱なあなたの交渉術」を読んだ。
本書は、元々は気弱で口下手な少年だったにもかかわらず、現在は弁護士として交渉の場面で活躍する著者が、『気弱な人だからこそ出来る逆転の交渉術』を説いたものです。
本書の交渉術は相手の感情や理性の状態に自分を合わせ、上手にコントロールすることを目指します。
そもそも人間と言うのは感情の生き物であって、何かを決断するときにはまず感情が「決断したい」と動いて、それにあわせて理性が働き、決断の正当化を始めます。
理性が先ではないのです。
それをうまく活用して、相手の感情に配慮し、理性で選択を迫るわけです。
相手に合わせてしまう「ソフト型交渉」や、相手を打ち負かす「ハード型交渉」に比べて、角を立てず、かつ自分の目的はしっかりと果たすことの出来る本書の手法は、まさに和を重んじる日本人向けの、実用的なものだと思います。
本書はノウハウやテクニックが論理的に解説されている上に、実用会話例がほどよいバランスで盛り込まれているので、非常に吸収しやすいです。
また、交渉を不利に導く4つのタイプとして
1.善人「うらなり」タイプ
●相手のことばかり気を使い、自分が不利になる
2.対立を避ける「平和主義者」タイプ
●対立関係が生じると譲歩を続け、負けパターンに入る
3.人の言うことをすぐ信じる「子供」タイプ
●嘘やハッタリを信じて、相手の言いようにされる
4.感情的になってしまう「坊ちゃん」タイプ
●冷静な判断ができなくなる
が上げられており、それぞれの弱点と留意すべきポイントが書かれているので、それを押さえつつ読む進められるのも特徴です。
●勝ち負けという概念を捨てる
・変なプライドを捨てて譲歩したほうが徳を取れることがある
・そもそもの目的を思い出す!勝つことではないはず。
●余計なことは話さない
・口下手なのに話すからぼろが出る
・自分の弱点を暴露したり、相手の自尊心を傷つけないように
●双方の力関係を的確に見極め、譲歩すべきところは譲歩し、そうでなければ譲歩しない
・相手の立場に敏感な気弱タイプだからこそできる
●まず相手に全てしゃべらせる
・相手が聞く耳を持った状態とは、自分の話を全て言い終えた状態
・まず相手の情報を聞き出してしまう(ニーズ、強み弱み、期限、限界値、代替手段など)
など、まさに気弱な人の「強み」を生かした交渉術です。
ビジネスの交渉場面のみならず、例えば上司からの飲みの誘いをどうしても断りたいときや、頼みごとを断りたいとき、しつこいセールスに断りを入れたいときなど、様々な場面で活用可能です。
かなりお勧めなので、是非読んでみてください。
以下、私用メモ
ハーバード流交渉術
1.人と問題とを分離せよ
2.立場でなく利害に焦点をあてよ
3.行動について決定する前に多くの可能性を考え出せ
4.結果はあくまでも客観的基準によるべきことを強調せよ
5.※相手も理性的であることが大前提
鉄則
1.善人「うらなり」タイプ
●相手に有利なことを言わない
●自分の要求を表明する
2.対立を避ける「平和主義者」タイプ
●交渉の目的を忘れない(「そもそも~」)
3.人の言うことをすぐ信じる「子供」タイプ
●人は信じても、事実は検証せよ
4.感情的になってしまう「坊ちゃん」タイプ
●交渉では、常に冷静に
お互いの利害が異なっているからこそ、双方が満足のいく結果に達することができ、合意できる
限定法
●競合の存在をちらつかせる
●期間を限定する
●数を限定する
要求せず質問する
●「仮に~~だったら購入いただけますか?」
●情報を引き出しつつ、相手を縛る
弁護士が教える 気弱なあなたの交渉術 | |
谷原 誠
日本実業出版社 2008-08-28 おすすめ平均 |