平塚俊樹さんの著書、「LAW(ロウ)より証拠」を読んだ。
良書です。
2つの理由で本書は読んでおくべきだと、私は感じました。
著者の平塚さんは、日本でただ一人の証拠調査士(エビデンサー)です。
本書で紹介されているその事件簿を見ると、私たちは一歩間違えれば不当に経済的・精神的自由を奪われ、多額の借金を抱えたり、肉親を失ったり、果てには自殺に追い込まれかねないことを痛感させられます。
一例を取り上げると、道を歩いているところを車にはねられた人が、相手から損害賠償を受け取るどころか、逆に訴えられたということがあるそうです。
このケースでは交通事故に遭ったのは女性なのですが、自動車道路の側道の、歩行者用の道を歩いていたところ車が「猛スピード」でぶつかってきて、入院してベッドから起き上がれない状態が1ヶ月以上続く重症をおったそうです。
彼女が動けないのをいいことに、犯人側は弁護士と結託して一方的にウソの供述をして、「女性が赤信号で横断歩道を渡っていた」というむねの調書を作ります。
ウソの供述による調書に対しては、当事者のもう一方が1ヶ月以内に異議を申し立てれば確定を防げるのですが、この場合女性は1ヶ月以上起き上がれなかったため、そんなことができるはずがなかったのです。
そもそも、そんな知識すらないのが普通でしょう(これを狙って、よけきれないと判断した犯人側はわざと 重症になるようにアクセルを踏んでいた模様)。
そしてしまいには、「赤信号をわたっているところをはねられたのだから、75万円以上の債務は存在しない」と、「債務不存在請求確認訴訟」を起こしてきたそうです。
多くの人は、こうしたトラブルに対処するための知識を持ち合わせていません。
そこで突然トラブルに巻き込まれると、手立てがわからぬまま時間が過ぎ、知らぬ間に不利な状況に追い込まれてしまいます。
弁護士を雇いたくても、高額な費用がかかる。
警察も忙しくてろくに対応してくれない。
もうどうしようもないという状態になった人が、平塚さんに相談をもちかけるそうです。
こうしたトラブルには、自分で証拠を集めたり、必要な証拠を持っていって考えうる全ての機関に相談したりと、やるべき手を全て打つくらいの徹底的な姿勢が必要なのだそうです。
まさに命がけです。
いつ自分がこういう場面に出くわすかわからないので、しっかり自分の防衛手段を知っておく必要がある、というのが、私が本書は読む必要があると感じた一つ目の理由です。
二つ目の理由は、平塚さんのエビデンサーとしての姿勢に、仕事の本質があるのではないかと感じたことです。
私はとにかく、加害者の陰で糸を引いている弁護士が許せない。組織でもけっこうな地位にいる人間のくせに、一般市民を陰で抹殺しているなんて
ここまで世の中がひどいなら、それに対抗していく手段を広めていかなければ、弱者は決して救われない。(中略)もちろん、本書を世に出すのもそうした活動の一環なのである。
こういったトラブルの際は、法律論で対抗するのではなく、社会で悪党を追い出すようにするのが大切である。
私は和解金を勝ち取れたことよりも、不毛な世界に溺れていた彼女が、前を向いて歩けるようになったことが心からうれしい。
社会に潜む悪を追放するべく死闘を戦い抜く使命感といい、トラブルを解決するのみならず、トラブルに巻き込まれた被害者が真の意味で幸福を手に入れられる方法を追求する誠実な姿勢といい、その仕事観からは我々も学ぶべきものが多いと感じます。
そもそも日本にエビデンサーは平塚さんただ一人で、完全な独占市場なのだそうです。
身を隠して秘密にしていれば独占状態が続くにもかかわらず、今回あえて本を書いたのも、このノウハウが知られることで日本がもう一度世界一安全な国になることを願ってのことなのだそうです。
これぞ真の社会貢献ではないでしょうか。
自分たちが何故、何のために働くのか、今一度思い出させてくれる一冊だと感じます。
一人ひとりが自分の使命についてもう一度深く考えることで、世界はよりよくなれると私は思います。
是非、読んでみてください。
以下、私用メモ
●自分が被害にあったらその法律を調べる
●会話を録音したテープは自分を守る武器になる
●人間同志の間に生まれたトラブルは、法律に頼りすぎず、人間的な手段で解決していくのが一番
●カードを使うときは、その場で金額を確認すること
LAW(ロウ)より証拠 | |
平塚 俊樹
総合法令出版 2008-07-10 おすすめ平均 |
2 Comments
>日本でただ一人の証拠調査士(エビデンサー)です。
これは何か米国とかで資格化されているものなのですかね?
米国ならありそうな気がしました。
ちょっと面白そうですね!
リスクマネジメントの考えとして取り入れたいですね。
ありがとうございます!
BJさん
>これは何か米国とかで資格化されているものなのですかね?
>米国ならありそうな気がしました。
するどいですね!
米国では弁護士と証拠調査士が
しっかり分業化できているのだそうです。
自分を守るのはもちろんですが、
家族や、周囲の人を守る上でも、
是非読んでおきたい一冊です。