マイケル・E・ガーバーの著書、「はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術」を読んだ。
本書は独立・起業を目指す人にとってのバイブルといっていいと思います。
多くの事業が失敗する本質的な理由と成功する企業に必要な要素が主に「会話形式」で解説されており、起業に必要なエッセンスがまるで染み渡ってくるように伝わってきます。
多くのスモールビジネスの起業が失敗してしまう原因は、「自分と事業とを切り離すことが出来ない」ことと「準備不足」ということに集約されるようです。
起業家には「起業家」「マネジャー」「職人」の3つの顔が潜んでいるのですが、多くの人は「職人」から抜け出すことが出来ずに失敗します。
多くの起業家は、その分野に関する専門的な能力を持っていれば事業を経営する能力は充分備わっているのだと致命的な勘違いをし、事業に関する計画を十分に練らないうちに起業に踏み切ってしまいます。
起業したばかりの「幼年期」においては、オーナー=事業です。
まさに事業のすべてをオーナー自らが取り仕切ることになります。
しかしだんだんと仕事量がオーナーの限界を超えるようになり、このままでは事業が続けられないことに気づきます。
人手が必要だと感じたとき、事業は「青年期」に入ります。
オーナーは専門的な能力を持つ人を雇い、自分がやりたくない仕事を変わりにやってもらうことにします。
ここで、今までの「職人」から「マネジャー」に変わることが求められるのです。
これに気づかずに、多くの人が仕事を「委任」するのではなく、「放棄」してしまい、自分の好きな仕事に没頭する「職人」のままでいようとします。
ろくに管理もしないのですから、当然従業員がオーナーの思い通りに働いてくれることはなく、業務のいたるところで問題が出てくるようになります。
オーナーは放棄した仕事をまた自分でやるしかなくなります。
つまり、事業と自分とを切り離すことが出来ず、すべてを一人で抱え込んでしまうのです。
この状態になってしまうと、事業はもう以前の幼年期に縮小するか、倒産するか、このままサバイバルするかの三択になるのですが、結局はどれも失敗ということに終わります。
では、どうすれば起業は青年期から成熟期に移行できるのか。
あらかじめ事業計画を入念に練り、幼年期の頃からまるで成熟企業のように経営するのです。
「事業のパッケージモデル」をあらかじめ作ってしまうのです。
1.事業の究極の目標を設定
2.戦略的目標を設定
3.組織戦略を考え
4.マネジメント戦略を考える
5.人材戦略を考える
6.マーケティング戦略を考える
7.システム戦略を考える
あらかじめ構想を練った上で起業したら、今度は
1.イノベーション
2.数値化
3.マニュアル化
のサイクルをまわすことで事業モデルを更に洗練させていくのです。
このサイクルを終わることなくまわし続けることが、企業の成長・発展そのものだといえます。
起業が成功するかどうかは、どれだけ精度の高い事業のパッケージモデルを準備段階で構想できるか、そして起業後も目の前の仕事に忙殺される「職人視点」ではなく、未来のビジョンを見据える「起業家視点」でイノベーション・数値化・マニュアル化のサイクルをまわせるかどうかに大きく左右されるのではないかと本書を読んで思いました。
「米国・成長企業500社のCEOがNo.1に選んだ本」というのも納得の一冊です。
お勧めです。
以下、私用メモ
起業に成功する4つの条件
1.大半の起業家が失敗に終わる理由を知る
2.成功率の高いフランチャイズビジネスから学ぶ
3.一流企業のように経営する
4.毎日の仕事で実践する
はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術 | |
Michael E. Gerber 原田 喜浩
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