カリスマのつくり方 (PHP新書) | |
戸矢 学
PHP研究所 2008-08-19 |
戸矢学さんの『カリスマのつくり方』を読みました。
カリスマとは何でしょうか?
カリスマは、直訳すれば「教祖」です。つまり、宗教のリーダーのことですね。イエス・キリストや仏陀、マホメッド等々を、本来はカリスマcharisma=教祖と呼びます。
本来は宗教の教祖をあらわす用語のようですが、最近では抜群のプレ全力を武器に大統領選を戦ったオバマ氏もしばしば「カリスマ」と言われるように、現代ではより広義に使われています。
カリスマ性というのは非常に強力な武器となりますし、私も「カリスマ」と呼ばれたら気持ちいいだろうなぁとは思います。
ただ問題なのは、カリスマ性というのは使う人が使うと非常に危険な、諸刃の剣になってしまうことですね。
例えば大悪人と呼ばれるアドルフ・ヒトラーも間違いなくカリスマの一人でした。
彼の場合は人をひきつける求心力には素晴らしいものがありましたが、指し示した方向性や用いた手段、倫理観などにはかなりの問題がありました。
要するにカリスマ性は倫理観とは無関係に成立してしまうのだということですね。
一人のカリスマに頼るとどうしてもそういった極端な事例が起きてしまうので、なるべくなら大衆でバランスを取りながら民主的に物事を進めていくのが理想的なのでしょう。
ただ今の日本の政治のように体制的な問題が根深くなっていると、一人のカリスマ性を備えた指導者が現れて一度すべてを壊すことも、変革のためには必要なのかなとも思います。
さて本書のテーマはカリスマの「つくり方」ですが、その中身を少し紹介しようと思います。
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●カリスマ想像の鉄則
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1.顔づくり
「良い経験を積んできた顔」をつくれ
2.歩き方のトレーニング
二本線歩き
3.ファッションの訴求
信頼感と安心感を目的にする
4.スピーチのトレーニング
滑舌と発生を鍛える
5.神話・伝説づくり
6.ブランド化の推進
7.言語体系の開発
カリスマ言語=バイブルをつくる
8.神殿の設置
9.参謀の任命
10.メディア・ミックス
クチコミからマス・メディアまで
11.ターゲットは全方位
確かに人の人格は、ある程度顔に出ますよね。
歩き方も、颯爽と歩く人はやはり魅力的に映ります。
滑舌と発生は、カラオケで鍛えましょうか。
神話・伝説は今作ってます。
興味深いのは「ブランド化」ですね。
カリスマ=教祖を企業に当てはめると、
1.カリスマ―社長
2.教義―経営理念
3.礼拝施設―本社ビル
4.教化活動―広報・宣伝
5.信徒―従業員/顧客
と見事に当てはまるのですが、ここでの「従業員/顧客」に対する影響力は確かにブランド力となりえます。
カリスマ性が個人レベルで実現すると、その支配下にある組織は「ブランド」になります。
これは一種の「信仰」なのです。極論すれば、「その企業の製品やサービスでありさえすれば買う」というのが「コーポレート・ブランド」の威力です。
熱烈なアップルファンのことをしばしば「カルト」と表現することがありますが、まさにカリスマは宗教であり、ブランドなのですね。
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戸矢 学
PHP研究所 2008-08-19 |