価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ | |
川上 徹也
クロスメディア・パブリッシング(インプレス) 2009-06-15 おすすめ平均 |
川上徹也さんの『価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ』を読みました。
本書で解説されているのは、爆発的なヒット商品を生むマーケティングノウハウではなく、売れ続けるためのストーリーを用いたブランディング戦略です。
成功する人間は、努力と才能の掛け合わせた値の大きい人間だ。才能についてはわからないが、努力は方法によって成功する確率は格段に上げられる。
しかしそのためには、「自分の戦力、自分に何ができるか(=X)」と「時代の流れ(=Y)」を綿密に分析し準備してから戦わなければならない。そして売れるためには、XとYで交わるように仕組んでいく必要がある。しかし、大抵の芸人は、XもYもわかっていないまま悩んでいる。だから売れない。
でも時として売れてしまうことがある。やっていること(X)は変わっていないのに、Y(=時代の空気)は絶えず変化していくので、いきなりそれが合致してしまうことがあるからだ。そしてその方が出会い頭の事故なので、インパクトが大きい。でも、大抵の場合は、偶然の事故なので、本人も自分がなぜ売れたのかわかっていない。公式がないから、根拠がない。自分のXもYもわかっていないため、Y(=時代の空気)が移り変わると、必ず潰れてしまう。いわゆる一発屋になってしまうのだ。
長く売れ続けている人間は、自分の強み(=X)を、必ずと言っていいほど軌道修正して時代の流れ(=Y)にあわせ続けている。だから、XとYの位置はいつも近い。なので、出会い頭の事故(大ブーム)になるようなことはない。せいぜい接触事故。でも売れ続けることができる。
これは本書の中で引用されている、島田紳助さんがDVD『紳竜の研究』のなかで語っている一説です。
私はこれをブログ・mixiを通して知り合ったけんろーさん宅で見たのですが、下手なセミナーに出るよりもこちらを見たほうがよっぽどためになると思います。
本書に登場するストーリー・ブランディングは、出会い頭の事故(大ブーム)を生み出す方法を教えてはくれませんが、一度訪れたお客様をファンに変え、リピーターに育て、クチコミを発生させて売れ続けるための方法はわかりやすく解説してくれます。
タイトルにあるとおり、価格や品質、広告で差別化しようとするものではないので、自営業や中小企業の経営層の方には特にオススメです。
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● ストーリーの黄金律
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1.何かが欠落しているまたは欠落させられた主人公が、
2.何としてもやり遂げようとする遠く険しい目標やゴールに向かって
3.数多くの葛藤、障害、敵対するものを乗り越えていく
誰でも映画やドラマ、またはゲームのストーリーに思わず惹き込まれ、はまってしまった経験があると思います。
一流の役者で、一流の演技力で、膨大な製作予算で、そして画期的なゲームシステムで商品を作っても、その背景にあるストーリーが共感できないものでは顧客の感動は生み出せません。
逆に上記の条件がそろわなくても、背景にあるストーリーが魅力的であるだけで、人の感情は動かされてしまうことがあります。
なので「ストーリー」を使ったブランディングは、ヒト・モノ・カネでは勝負できない自営業や中小企業の方にとっては非常にオススメなのですが…。
この「ストーリーの黄金率」については同著者の前作、『仕事はストーリーで動かそう』に詳しく書かれているので、是非そちらを読んでみてください。
仕事はストーリーで動かそう | |
川上徹也
クロスメディア・パブリッシング(インプレス) 2008-11-12 おすすめ平均 |
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● 志のストーリー
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本書では「3本の矢の法則」として、ストーリーを3つのレベルに分類しています。
それぞれ、「志のストーリー」「ブランド化のストーリー」「エピソードのストーリー」なのですが、
簡単に言ってしまうと、あなたが本当に実現させたくて、なおかつ世の中に共感を呼ぶような「志」を見つけ、その「志」に向かって本気で情熱を持って突き進んでいくだけていいのです。
自分が本当に実現させたい「志」を見つけるのは、意外と難しいものです。
本書では「志」を見つけるために、
・あなたの会社やお店で実現したい願望をとことん書き出す
・あなたの会社やお店で絶対にやりたくないことを書き出す
の2つを実行することを推奨しています。
私も少し前にこちらの記事で自身のやりたいこととやりたくないことについて整理しました。
何故これをやるかというと、やりたいと思っていることが、やりたくないことを我慢してやってでもやりたいことなのかをハッキリさせるのに、この方法が非常に有用だからです。
自分がやりたいと思っていることが、出来ればやりたいくらいに思っていることなのか、それとも何が何でも実現したいと願っている志なのか。
是非本書を参考に「志のストーリー」を見つけ、さらに「ブランド化のストーリー」「エピソードのストーリー」についても考えてみてください。
私も早速次回のMPSで「うちの会社のストーリー」を書き上げてみたいと思います。
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