スポーツ心理学者が教える「働く意味」の見つけ方 | |
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杉浦健さんの『スポーツ心理学者が教える「働く意味」の見つけ方』を読みました。
本書はトップ・アスリートや一線で活躍するビジネスパーソンを題材に「やる気」を研究しているスポーツ心理学者である著者が、働く意味の必要性とその見つけ方について述べた一冊です。
本書を読むとまず、目的と目標はどう違うのか、そして何故働くことに対して目標だけでなく目的も持たなければならないのかが良くわかります。
加えて、そのような目的を見つけるためのヒントもたくさん見つかると思います。
さらに人によっては、今までの(もしくは現時点の)キャリアへの意味づけ・解釈にポジティブな変化が見出せるかもしれません。
以下、私が特に共感した部分を紹介します。
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● 目的と目標の違い
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生きがいを持って充実して働くためには、そして自分の納得する成果を出すためには、働く力の源となる、働く意味が必要なのです。
目的とは、目標に対する「何故?」のことです。
例えばテストで100点を取ることが目標だとして、何故100点を取りたいのかがハッキリしている場合に出せる力(やる気)は、そうでない場合の比ではないのです。
設定した目標が高ければ高いほど、途中で何度も躓いたり、壁にぶつかったりする場面が訪れます。
そのたびに「何故自分はこんな大変な思いまでして100点を取ろうとしているのだろうか?」と自分に問いかけることになります。
そのときに納得できる答えが出てこなければ、それ以上頑張る気は起こらないのです。
実際、著者が分析・研究したトップ・アスリートや一線のビジネスパーソンは皆、自分たちの仕事や目標に対しての「何故」が明確だったそうです。
言い換えれば、目的や意味が自分の価値観や本質に深く根ざした有意義なものであればあるほど、大きなエネルギーが発揮でき、より高い成果につながるのだといえます。
天才と呼ばれている人は例外なく、誰よりも厳しいハードワークを積んでいるものです。
それが目的や意味の成せる業であるならば、私たちが大きな成果を上げる上で最大のボトルネックとなるのは、実はこれなのではないかと私は思います。
たとえば、一〇〇回叩けば、開かれる扉があったとする。
人は、一〇〇回ということが最初からわかっていれば、一〇〇回叩くのだが、わからないままに、九九回で諦めてしまうかもしれない。
僕の夢が、いつ実現に向かうか、わからない。
ただ、僕は、いつ開かれるかわからない扉を、開くまで叩き続けるだろう(『セカンド・ドリーム』集英社)。
これは本書で紹介されている、松岡修造さんの言葉です。
いつ開くかもわからない扉を一〇〇回も叩き続けられるかどうか、それを分かつのは才能ではなく、扉を叩くことへの意味であり目的なのです。
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● 働く意味が見つかる瞬間
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では、働く意味が見つかるのはどういうときなのでしょうか。
著者によると、まずそれは働くことに対する行き詰まりから始まるのだそうです。
それはセールスがうまくいかないということであったり、経営の行き詰まりだったり、忙しい日常の中でふと自分のやっていることの意味が分からなくなることだったりするわけですが、やはり人は行き詰ったり、悩んだりしたときに、働く意味を考える機会を持つものなのです。
働く意味について考え出すこと、つまりアンテナを立てることが最初の一歩なのです。
折に触れて「自分は何故これをやるのか?」「何故勉強するのか?」「何故働くのか?」こういったことを自分に問いかける習慣を持つことがまず大切で、これなしにある日突然目覚めるものではないのです。
私は中学生の頃から父親に「今やってる勉強は何のためにやっているのか、どう役立つのかを常に自分の頭で考えなさい」といわれ続けて育ったのですが、これは非常に幸運だったなと思います。
アンテナが立つと、今度は周りの情報に敏感に反応できるようになります。
そういうときに転機となるような発見や出会いが起こるものなのです。
転機の研究を続けてきてわかってきた、人生の転機が訪れる第一条件は、自分を変えたい、もしくは変わらないとやっていけない、そんな心理的、物理的な状況におかれることでした。
変わりたい、変わらないといけないと自分で思ったとしても、すぐに転機がやってくることはありません。しかしながら、そのような状態の中で、苦しんだり悩んだりしていると、あるとき、変わるきっかけがやってくるのです。
私も1年半くらい前のある出来事をきっかけに、このままではいけない、何かを変えなければいけないと強烈に感じていた時期がありました。
そのときたまたま出会ったのが梅田望夫さんの『ウェブ時代をゆく』でした。
「水をあびるように本を読むことで自分の志向性が見えてくる」「ウェブは情報を預ければ利子をつけて返してくれる銀行のようなもの」
この言葉との出会いがまさに私にとって転機となる出来事でした。
それまで本など年に1冊読むか読まないかだった私が、毎日ビジネス書を読むようになったのは、ひとえにあの体験を通して明確な目的・意味を新たに見つけることができたからだと思っています。
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● 過去は変えられる
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何か意味が見つからないか、意味が感じられる仕事にならないか、そう思って仕事をしていると、意味が自動的・選択的に見えてきます。意味は「そこに存在するもの」ではなく、発見するものなのです。
これとは逆に「こんなことやったって意味がない」と思い込んで仕事をしていては、そこにある意味は見えてきません。むしろ、その仕事の意味が感じられにくい側面ばかりがクローズアップされて見えてきてしまうでしょう。
それはちょうど、ネガティブな気分のときには、ネガティブなことばかり目に付いて見えてしまうことがあるのといっしょです。
意味を見出してから転職すれば、前職は自分にとって何らかの意味が合ったキャリアになるからです。
私は1年半前に内定先の会社を辞退して、1年間就職を見送りました。
しかし今思い返しても、あの1年間ほど自分が大きく変わった時期はなかったのではないかと思います。
そう思うと一連の体験には間違いなく意味があったのだと思いますし、だから私は少しも後悔していません。
過去への意味づけ・解釈はこれからの働きかけ次第で、いくらでも変えられます。
だからあまり失敗を気にせず、大きな志を持って、挑戦していきたいと思います。
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