プラットフォーム戦略 | |
平野 敦士 カール アンドレイ・ハギウ
東洋経済新報社 2010-07-30 |
つまり、プラットフォーム戦略とは、
1.多くの関係するグループを「場」(プラットフォーム)に乗せ、
2.マッチングや集客などさまざまな機能を提供し、
3.検索や広告などのコストを減らし、
4.クチコミなどの外部ネットワーク効果を創造する
ことで、新しい事業のエコシステムを構築するという戦略です。
Microsoft、Google、Yahoo、Facebookなどの成功により、今「プラットフォーム」という言葉が非常に注目されています。最近私も自社の製品・サービスにおける他社との協業戦略の立案を任されることになったので、これは研究する必要がありそうだということで本で勉強してみることにしました。その際に活用した平野敦士カール氏の『プラットフォーム戦略』から、自社でプラットフォーム戦略を考える際に私が重要だと感じた7つのポイントを取り上げます。
1.自らの存在価値を創出する
プラットフォームが成功するには、そのプラットフォームが存在することによって、それがなかった場合と比較した際のメリットが必要です。例えばクレジットカード会社はカード発行業務、端末設置、審査、決済業務を一手に引き受けることによって、利用者と取り扱い店舗双方の取引コストを引き下げることに成功しています。また、「ネットショップならAmazon」といったブランドを確立することができれば、消費者が商品を求めて探し回るコストを削減できるとともに、プラットフォーム側にとっては集客のためのマーケティングコストの削減になります。
2.対象となるグループ間の交流を刺激する
プラットフォームに参加するグループ間で、クチコミが広がることも重要です。「この本はためになる」「このゲームで遊ぼう」といった具合に、情報が勝手に広がる仕組みを作ることにより、プラットフォームは自然増殖を始め、拡大していきます。特に資金力に限りがある会社にとっては、広告・宣伝に多額の資金を費やせるわけではないので、ここの設計を十分に練る必要がありそうですね。
3.社会の流れを把握する
新しいライフスタイルが生まれる時や、規制緩和や制度変更によって変化が生じているところは、プラットフォームを生み出すチャンスです。まだプラットフォームが存在しない、もしくは既存のプラットフォームがまだ成功していない領域で、「何故成功していないのか?不満や不平は何か?」を考えることが、大きなヒントとなります。システムの分野でも「クラウド」というキーワードがかなりの盛り上がりを見せているので、チャンスは大きいと言えそうです。
4.メーカー発想を捨てる
研究開発費や製造原価に利益を上乗せして発売するという「メーカー発想」では、プラットフォームはうまくいきません。将来の市場の拡大を予想して、そのリスクを取れるような価格設定が必要で、ここに関してはフリーミアムに共通する部分だと言えそうですね。
5.ルールを制定し、管理する
プラットフォーム上に粗悪品が蔓延するようになると、消費者にとっての魅力が失われ、プラットフォームの力を急速に失うことになります。iTunesやiモードがコンテンツの審査を行ったり、Amazonがユーザー同士によるレビュー機能を用意したりしているように、プラットフォームのクオリティをコントロールするためのルールを制定し、管理することが重要です。
6.安易にプラットフォームに飛び込まない
iTunesの成功により多くのユーザーを獲得したAppleに対し、もはや音楽レーベル各社はなすすべがない状況です。iPodやiPhone、iPadといった端末で利益を生み出せるAppleにとっては、そのなかで配信するコンテンツについては価格を引き下げる力が働きやすくなり、そうなると音楽レーベルにとっては非常に苦しい展開になります。安易にプラットフォームに参加して失敗したパターンはいくつもあるので、事前に戦略を練ることが大切です。その際は、自社単独もしくは他社と組んで交渉力を持った上で参加できないか、あらかじめ価格や収益確保について契約をかわせないか、あるいは既存プラットフォームの上でプラットフォームを構築できないか、といったことを考えてみましょう。
7.キラーコンテンツを用意する
Microsoft WindowsのOfficeやiモードの着メロのように、成功するプラットフォームにはキラーコンテンツと言われる人気コンテンツやサービスがあるものです。それは「そのプラットフォームがどういうプラットフォームなのか?」というブランドを形作る上でもっとも重要な要素です。ユーザーをファンに変えるためには、製品やサービスの裏に思想・グランドデザインが存在することが不可欠だと私は思うのですが、現実を見渡すと実はほとんどの企業が出来ていないのがこの部分なのです。これからの世の中のあり方、もしくはあるグループの在り方についてなんのビジョンも持たずに、ただ製品だけを提供している企業が残念ながら非常に多いですね。
私も次回のミーティングに向けて、マインドマップを書きながら読み進めました。本書は是非、自社の会社や製品、サービスを具体的にイメージしながら読んでほしい一冊ですね。
プラットフォーム戦略 | |
平野 敦士 カール アンドレイ・ハギウ
東洋経済新報社 2010-07-30 |