仕事に幸せを感じる働き方 | |
横山 信治
あさ出版 2010-12-10 |
仕事に不満を感じた時、転職が頭をちらつきます。しかしその不満が本当に転職によって解決するのかどうかは、良く考えてみる必要があります。本書『仕事に幸せを感じる働き方』によると、転職で年収が上がった人の割合は、全転職者のうちの約25%であり、殆どの人は年収が下がっているのだそうです。
著者が見てきた3000人の転職者のうち、うまくいったのは約10人、それ以外のほとんどの人は失敗しているそうです。転職希望者がこうも失敗してしまう理由についてはいくつか述べられているのですが、大きくまとめてしまうと、「自分で解決できない問題の解決策を、転職に求めてしまうから」であるとしています。これをもう少し分類すると、人間関係の問題、給与の問題、仕事内容の問題の3つがあげられます。
例えば人間関係の問題の筆頭は上司との相性ですが、そもそも相性のよい上司とめぐり合える確立自体が低いので、職場を変えてもまた同じような上司にめぐり合う可能性は高いです。給与の問題も、人は自分自身を評価するときに甘くなってしまいがちなので、周囲からの評価との間にギャップが生まれてしまい、それが不満に発展しがちです。自分の能力は転職したからといってすぐに変わるものではないので、評価も当然変わらず、不満は解消しないわけですね。
仕事内容についても、自分が考える理想の仕事などどこにもないので、青い鳥を探すだけ無駄であることに気づきましょう、というのが本書の主張です。これはこれでロジックとしては正しいと思いますが、私は全面的に賛成というわけではありません。「転職しても失敗するだけ」「あなたの求める理想の仕事などない」「良い上司などそもそもいない」「会社に貢献せずにお客様のためなんて言うべきでない」「今の会社で能力を評価されていない、給与を低く抑えられているなどとは間違っても考えてはいけない」。
これを経営者が言うと、社員を都合よく飼いならすための口実になってしまいます。現実に高い離職率に悩む経営者がこういった「仕事論」を社員に教え込み、転職させないように仕向けている企業を私は知っています(自分の会社ではありません、念のため)。おまけに「仕事に対する不満は、仕事に原因があるのではなく、仕事に対するあなたの考え方に問題があるんだ」と言われ、「悪いのは自分なんだ」と真に受けてしまった人は、無理に自分の感情を否定しようとしてだんだん心が病んでいきます。健康を害するくらいなら転職したほうがよっぽどましです。
私の会社にも同じ営業部内でチームを変えたことで元気になった社員がいますし、環境を変えることで問題が好転することはあるのです。ちょっとした仕事上の不満に「転職はステップアップ」というイメージが合わさって、なんとなく転職したいと考えているのであれば気をつけたほうがいいです。しかし仕事に深刻な悩みを抱えていたり、目的があるのであれば、どんどん転職すればいいと私は思います。本書はあさ出版の吉田様よりいただきました、ありがとうございます。
仕事に幸せを感じる働き方 | |
横山 信治
あさ出版 2010-12-10 |
One comment
19日(日曜)は新宿でトリプル講演です!
「仕事に幸せを感じる働き方」 「仕事に幸せを感じる働き方」(著者 横山信治さん) 丸善OAZOで大展開&amazonでも品切れになるなど出足好調のようです! ちなみに19日は、私と横山信治さん ぐっどうぃる博士のトリプル講演会 開催です! 14-17時 http:/