徹底検証 トヨタ | |
奥村 宏
七つ森書館 2011-01 |
就活中の学生は本書を読んでどう思うのでしょうか?「大企業=安心な会社」「大企業=健全な会社」だと勘違いしている人は是非本書を読んでみてください。「カンバン方式なんて、ただたんに下請けをいじめているだけじゃないの?」と思っていましたが、やっぱりなって感じです。日本を代表する企業として賛美されている大企業たちが、いかに政治やマスコミと癒着し、黒い実態を隠しているのかが垣間見れます。
トヨタの堤工場で働いていた内野健一は過労死のため三〇歳で亡くなったが、「亡くなるまでの一か月間、時間外で職場にいた時間は一日平均で四時間以上。自主性の範囲を超えている」と妻の博子は訴えている。「トヨタが世界一になるために、従業員や家族の我慢や犠牲が必要なのか」と彼女は言っている。(中略)トヨタでは、「自発的に働くことを強制されている」ことがよくわかる。
つまりトヨタは人件費は一切支払わずに他社の社員の一切の管理をするのです。いくら残業させてもトヨタが残業代を払うわけではないので、まったく自分たちのふところは痛まない」
こうしてトヨタは系列会社から従業員を出向させ、それをこき使うことによって利益をあげている。これは独占禁止法が禁止している「優越的地位の濫用」に当たるが、これがトヨタシステムになっているのである。
隔離された立地、独特の空気、洗脳的教育、厳しい規律など、それはまるで”プチ北朝鮮”だと元社員が言っているというが、”世界企業”を自負し、巨額の利益をあげているトヨタの従業員が”プチ北朝鮮”のような環境で生活しているとは驚きである。そして従業員たちは仕事の時間が終わっても、会社のいろんなイベントに拘束され、プライベートな自由な時間は侵食されているという。
ある期間工の場合、(中略)手取りは二一万円余りで、年収は二五〇万円程度で、”ワーキング・プアー”だという。それでもトヨタ本体で働いている人はまだましで、下請け会社で働いている人はトヨタ本体の、半分にも満たない低賃金で長時間、過重労働が当たり前になっている。
このようにトヨタ自動車とその関連企業では数多くの期間工や契約社員などの非正規社員が働き、そして外国人労働者もいるが、それは劣悪な労働条件で働いているにもかかわらず、トヨタ自動車労組はそれに対してなんらの有効な対策をとっていない。それはトヨタの正規社員だけの組合であり、会社のためにつくす組合になっている。
巨額の利益を上げ、2007年にはアメリカのGMを抜いて生産台数で世界最大の自動車メーカーになりましたが、なんのことはない。自分たちの地位を利用し、下請け会社や従業員から搾取しているだけです。必要な部品を必要な数だけ必要なタイミングで調達することでムダを排除したと「カンバン方式」を自慢気に語っていますが、がんばっているのはトヨタのわがままに付き合わされて無理をして納品しなければならない下請け会社でしょ?
劣悪な環境で長時間労働させられ過労死する従業員がいても問題が明るみにならず、脱税がばれても「申告漏れ」として済まされているのは、献金で政治とも癒着し、広告費でマスコミもてなずけているからです。散々弱者から搾取しておいて「社会的責任」を語るのもお笑いです。もっと内部から反発がでてもおかしくないのに、現実はトヨタバッシングで盛り上がっているのはアメリカです。日本はどうなっているんでしょうか。
徹底検証 トヨタ | |
奥村 宏
七つ森書館 2011-01 |
2 Comments
トヨタの話で思い出すのは、秋葉原無差別殺人を起こした加藤被告です。彼もまたトヨタ系子会社で派遣社員として勤務していた記憶があります。
トヨタ然り、日産然りですが、下請けにコスト削減をさせることでものづくりの頂点に居るメーカだけが美味い汁を吸うピラミッド構造は、ずっと昔から続いているだけに、根が深く、それを変えることは難しいのかも知れないですね。
>おっぺけさん
IT業界も似たところがあって、
大手SIerがピラミッドの頂点にいて、
受注をしたら後は下請けにアウトソースし、
自分たちはマージンで利益をあげるという企業もあるそうです。
私は違和感を感じてしまいますね~。