一部の飛び抜けた企業を除けば、営業活動の悩みはどの企業にも存在するのではないかと思う。しかしその悩みの原因がどこにあるのかは、良く見えないことが多い。
自社の問題がどこにあるのかが見えるフレームワークがあればと思っていたが、今回ご紹介する『最強の営業戦略』からはいくつかのヒントを得ることができた。今日はそれらをまとめておこうと思う。
1.営業課題解決の6ステップ
営業活動における悩みの要因としては、営業活動の評価指標の誤り、戦略自体が不明確、戦略と個別活動のリンクの不足、営業の役割定義と活動標準化が未確立、営業活動が非効率、営業体制が不適切、モニタリング・PDCAサイクルの不全などが考えられる。
本書ではそれらを解決するステップとして、6つを定義している。
この記事では特に参考になった2つ、「ステップ③営業の役割定義と活動の標準化」と、「ステップ⑥営業活動のPDCAの仕組みの確立」を取り上げる。
2.営業の役割定義と活動の標準化
一口に営業といっても、求められる役割は企業によって異なる。まずはそれを定義することが必要である。そして、求められる役割を実現するためにどのような活動が必要なのかも標準化する必要がある。
ハイパフォーマーとローパフォーマーを比較すると、上の図のような傾向がある。ハイパフォーマーが活動量に比例して販売量が伸びるのに対し、ローパフォーマーは活動量と販売量に相関関係がない。これは、ハイパフォーマーが成果を出すうえで計画的に活動しているのに対し、ローパフォーマーは多くの部分で運任せになっているためにおこる。こういう状態で活動量ばかりを増やす施策をとると、まったく成果が出ないことになる。
もし自社が上の図のような状態であれば、やるべきことは役割の明確化と、活動プロセスの標準化である。ハイパフォーマーが成果を出す上でどういった有効活動をしているのかを抽出し、ベストプラクティスとして整理するのが望ましい。
3.営業活動のPDCAの仕組みの確立
標準化された活動プロセスが定義されたら、いくつかの企業にたいして個別の活動プランを作成したい。活動プランをマネージャーが定期的にモニタリングすることで、担当者がどこでつまずいているのかが見えるからだ。
ハイパフォーマーであれば、自分の取るべき行動や施策を全て理解して活動していることが多いため、最終的な結果だけで判断してもいい。しかし、あるべき営業活動の内容がわかっていない場合には、結果だけで評価してもパフォーマンスは向上しない。よって、生産性の高い活動プロセスが定着するまでは、マネジャーが一緒になって活動プランを作成し、それを定期的にモニタリングすることが必要である。
所感:夢のある営業スタイルを目指して
本書で書かれていることの多くは、営業活動の生産性を高める上で有効な手法だと感じる。ただ、「戦略」とか、「攻略」といった用語がところどころに出てくるところに違和感を感じた。
こういう用語を目にするとき、私がイメージするのは「いかに顧客に売り込むか」という営業スタイルだ。そこでは自社が儲けることが第一であり、その結果顧客にも利益があればいいと考えている。評価される大事な項目はどれだけ顧客や世の中に貢献したかではなく、売上や利益といった数字である。
私が目指しているのは「いかに顧客と共に素晴らしい仕事を成し遂げるか」という営業スタイルである。素晴らしい製品やサービスを提案・提供することに価値があり、その結果として顧客にも自社にも、そして世の中にも利益が生まれるはずだと考えている。どれだけ世の中にとって意義のある仕事をしているか、その結果として正しい利益が出ているか、どちらも同じくらい重要である。
前者の営業スタイルは、自社が他社と比べていかに優れているかをアピールする。後者の営業スタイルは、自社と顧客が協力することでどのような未来を実現できるかを膨らませる。
私は後者のスタイルのほうが楽しいし、夢があるし、世界を変えるチャンスがあると思う。また、結果的に大きくそして持続的に利益が生まれるのも、後者であると思う。そして、私は今の職場でそれを実現できると信じている。
最強の営業戦略 | |
栗谷 仁
東洋経済新報社 2009-12-04 |